Amazonは誰もが知るEコマースの巨人である。ほぼデジタル経由での売上にもかかわらず、2018年度の全米小売業売り上げランキングではとうとう3位に上り詰めた。絶対王者である1位Walmartとの差はまだまだ大きいが、アメリカのほとんどの小売業はAmazonに完全にしてやられている。
そのAmazonの生命線は配送のスピードである。注文から手元に届くまでの時間を限りなくゼロに近づけるのがAmazonの至上命題であるとも言える。このため、Amazonはラストワンマイルの充実に多額の投資を敢行しており、7月の発表では、この投資のために同社の利益が圧縮された故を発表している。その多くはプライム会員向けの翌日配送システムへの投資で、同社が発表したその額は8億ドルに上る。
アメリカのラストワンマイル配送は、FedEx, UPS, USPS(アメリカ合衆国郵便局)によってその殆どが賄われているが、これまで翌日配送の実現はほとんど無理に等しい状況だった。プライム会員であっても追加の特急料金を支払って2日後という状況が普通といえ、日本のそれとは状況が大きく異なる。Amazonは自前で配送機能を抱え、この状況を打破しようともがいている。
一方Walmartは自社の店舗網と物流網を活かすことに注力し、翌日配送の領域ではAmazonを脅かし始めている。Forbesの記事によると、3つの州で行われた翌日配送のテストは前倒しで完了し、8月に全店舗でのロールアウトを発表した。また、1100店舗の商圏で「同日」配送を実現、その規模を拡大している。Walmartの代名詞となりつつあるピックアップタワー*は1200店舗に実装を完了し、ピックアップ用のカウンターはほぼ全店舗に配備。また、InHomeDeliveryと言われる、Walmart店員が顧客の自宅冷蔵庫まで食品を届けるサービスもこの秋にスタートする。
Amazon最大の競争力の一つであった配送力は、eコマースにおける生鮮食品や日用品への配送ニーズ増加とともに、陰りを見せ始めている。ここに来て、元祖巨人のWalmartがその底力を見せ始めた格好になっている。
参考情報:
Forbes.com(2019), Walmart Shows It Has Edge Over Amazon In Intensifying Shipping War, retrieved from https://www.forbes.com/sites/joanverdon/2019/08/15/walmart-on-the-amazon-shipping-wars-we-got-this/#76e8b86556c9
Business Insider(2019), I ordered the same items from Amazon and Walmart to see which would do one-day shipping better — but both had issues, retrieved from
https://www.businessinsider.com/amazon-vs-walmart-one-day-shipping-compared-2019-7