モノの人工知能、すなわちAIとIoTを融合させたAIoTという言葉が生まれようとしている。
IoTの発展は基本的にクラウドコンピューティングによる処理を前提としている。データのストレージと分析処理をクラウドに任せ、センサーを組み込んだデバイス側はデータ収集と転送、そして処理後のデータを受け取ることでデバイスとしての機能を最適化し、ユーザーに最適な操作を促す。
IoTの専門家であるJanakiram MSV氏は、Forbes誌への機構でIoTを次のように分解している*1
これにAIが加わることで、IoTにAct(行動)という機能が追加されることになる。
彼によると、IoTへのAIの融合は2つのパターンが考えられる。
センサーそのものに知能をもたせる、つまりデバイス側にAIを組み込むことで、データ収集と分析の両面で効率化が促される。いわゆるエッジ・コンピューティングの概念といえる。例えば画像センサーにAIを組み込んだ場合、特定のパターン認識のときだけデータ通信を行うことが可能になり、いわゆる常態監視のための通信負荷が劇的に削減される。すなわち、通信コストが下がり、クラウド側の演算不可が減る。さらに深層学習によってパターン変化を予測分析に使うことが出来、事故や故障の事前検知が可能になる。
Janakiram氏は、「IoTはリアクティブ(反応型)であるのに対し、AIoTはプロアクティブ(積極型)である」*2ことが、両者の大きな違いであると主張する。
現在、様々なインフラ保守領域でIoTによる監視が行われているが、AIの組み込みによってプロアクティブな保守が実現できれば相当なコストダウンが実現できるだろう。
例えば、ビルの空調システムに適用されたときのことを考えてみよう。
外気温と各フロアの空調利用状況、室内気温、そして利用電力などから各部品の劣化と交換タイミングが予測できるだろう。それだけでなく、故障によって暖房/冷却効率が下がったときの消費電力コストが解れば、事前の交換で管理コストを最小化できるだろう。また、ワークスペース内の平均人口や稼働設備と室温変化の相関が解れば、内装の改善による更なるコストダウンも期待できる。当然、工場設備管理において、故障する前に交換することでチャンスロスが防がれ、生産効率に直結するのは明らかである。
Industory 4.0はIoTを前提とした次世代の製造基盤であるが、その根幹は予知保全による生産効率の最大化とコストの最小化である。モノがインターネットに接続する、という元来的なIoTとビッグデータの発想ではIndustry 4.0の実現は難しいだろう。IoTがAIoTになることで、通信、演算負荷が軽減され、インフラ管理コストが最小化され、かつ生産パフォーマンスが高く維持されることが本質であるとすれば、組み込みAIによるIoTデバイスは必須のアイテムと言える。
デバイスに何を判断・処理させ、クラウドに何をさせるのか、といった、AIoTを前提とした機能設計が今後重要度を増していくことになるだろう。
引用情報:
*1,*2
Forbes.com(2019), Why AIoT Is Emerging As The Future Of Industry 4.0, retrieved from https://www.forbes.com/sites/janakirammsv/2019/08/12/why-aiot-is-emerging-as-the-future-of-industry-40/#96f1e78619be