アメリカ発マットレスD2C協奏曲
アメリカのニュース専門メディア、CNBCの記事によると、現在アメリカのマットレス業界においてD2C(Direct to Consumer:メーカ直販型のeコマース企業)ブランドは175もあるという。そして、どれも似た感じであるということだ*1。 アメリカ人の生活においてマットレスは非常に重要である。縦約2メートルの安息の場所は、どんなにオンボロなアパートでも必要だ。ホームレスの人々ですら、苦しい生活の中でもマットレスを調達し、居住空間の中心に置いている。そのマットレス業界は、長らく旧態然としたものだった。ダウンタウンに行けば必ずショールームがあり、様々なマットレスが売られている。そして、店を訪れれば十中八九、店員の執拗なマークに悩まされることになる。そして、マットレスはその大きさ故、持ち帰りができない。多くの都市生活者は、マットレス購入のたびに配送を頼み、配達員にチップを渡すために配送日に会社を休まなければならない。そして、引っ越しのたび、マットレスを捨てるハメになる。また、日本では考えづらいが、ベッドバグ(いわゆる南京虫)の発生は案外多発する。そして、一度発生すれば、業者を呼んで消毒し、消毒完了の証明書を市の衛生局に提出しなければならない。もちろんマットレスは問答無用で廃棄される。

そんなアメリカ人のマットレス事情を変えたディスラプターがCasperである。2013年に創業し、「ニューヨークで最もイケてるスタートアップ」の称号を手にしたD2Cマットレス企業の先駆者である。Casperの特徴はなんといっても「スマホで買えるマットレス」であり、優れたUIと安価な価格帯、無料配送、そして、圧縮梱包による配送時の手軽さである。Casperのマットレスはスプリングレスなのでくるりと折り曲げることが出来る。このため梱包サイズは従来の4分の1になる。さらに抗菌シートを活用することでベッドバグの発生も防いでいる。同社は、現在シリーズCの調達ステージにある。これまでに1.4億ドルを調達し、とうとうユニコーンの称号を手に入れた。 その後、様々な追随者がマットレスD2Cビジネスに参加し、市場は混迷を極めている。先述のCNBCの記事によれば、昨年のアメリカのマットレス市場において、実に45%がオンライン経由で購入されている。また、大手を含めて多くのマットレスメーカーは生産ラインをアウトソージングしており、新興メーカーでも比較的参入障壁が低く、かつ利益率が高いことが175ものブランドによるD2Cマットレス戦争を後押ししている。*2 ちなみに、巨人Walmartも2018年、自前のD2CマットレスブランドであるAllswellを発表。高単価で比較的回転率の早いマットレスビジネスは完全に後発となったWalmartにとっても魅力的でかつ勝算のあるビジネスなのであろう。

 

引用情報:

*1,*2, CNBC(2019), There are now 175 online mattress companies—and you can't tell them apart, retrieved from https://www.cnbc.com/2019/08/18/there-are-now-175-online-mattress-companiesand-you-cant-tell-them-apart.html

参考情報:

Casper(2019) https://casper.com/ Walmart.com(2019), Allswell, retrieved from https://www.walmart.com/cp/allswell/2114296

 

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