Kobalt、音楽版権の世界をDXするか

Kobaltはニューヨークに本拠を置く音楽版権管理のプラットフォームを提供する企業で、版権管理実務も代行している。Willard Ahdritzはスウェーデン人。90年代に同国で技術系のアントレプレナーとして活躍した彼はサックスプレイヤーでもあった。インターネットの波が押し寄せる中、旧態然とした音楽業界の仕組みに危機感を覚えた彼は、2000年にKobaltを創業する。

同社は堅実な資金調達を繰り返し成長を続けてきた。出資元はGoogle VenturesやそのFounderであるBill Marisが立ち上げた先進テクノロジー専門のVCのSection 32、そしてDELLの創業者であるMichael Dellから個人的な投資を受けている。

Kobaltは非常に簡単に説明すると、音楽のデジタル版権を提供し、独立系ミュージシャンと直接契約を結ぶ一方、そのシステムを活かし、中堅レーベルのデジタル版権管理も受託している。そのサービスの根幹は、彼らが独自に構築した楽曲のデータベースと、世界各国のネット上で配信されている音楽のトラッキング、そしてこれらを背景とした著作権料の回収である。彼らは一切の楽曲著作権を持たず、アーティストの版権管理や管理状況を把握できるダッシュボードサービスの提供で収益を得ている。

2015年のWIREDの報道によると、同社はアーティスト約8000組の楽曲60万曲を管理しているイギリス最大、アメリカで2位の独立系版権出版会社であり、そのクライアントにはMassive AttackやBob Dilanなどの世界的アーティストも含まれている。*1。

Techcrunchの記事によると、現在の音楽版権はSpotyfyやiTuneなどのデジタル収益に大きく依存しているという。版権の分類には大きく分けて3つの種類がある。第1にパフォーマンス権:ネット、リアルのラジオ、店舗などで再生されるもの。第2にメカニカル権:CD、iTunes、 着信音など、何らかのデバイスで再生されるもの。第3にシンクロ権:TVCM、映画、ゲームなどのコンテンツの中で利用されるもの、である。SpotifyやiTuneはパフォーマンス権とシンクロ権両方に該当するため両方の版権を支払っている。そして、最大の売上構成となるパフォーマンス権においては、世界各国で様々なネットラジオや配信メディアがあり、追跡は非常に困難であるという。*2

Kobaltは世界各国の伝統的版権会社と競合するのではなく、デジタル部分のトラッキングや権利回収を代行することで共存の道を選んだ。同社はAMRAと呼ばれるデジタル版権管理団体と提携し、独自の版権料回収スキームを構築している。Techcrunchの同記事によると、Kobaltは、各企業が昨年回収した3億8700万ドルの使用料のうち、2億6300万ドルを回収しているという。*3

版権管理、ミュージシャン、そしてオーディエンスとの関係は複雑だ。デジタル化が進み、誰でも作曲し、歌い、演奏して、音楽をリリースできるのが現代である。一方でこれを管理する法律は複雑であり、かつ時代遅れとも言える。作詞作曲者には著作権があり、演奏者やシンガーには隣接権がある。アーティストたちを発掘し、育て、売り出すレコードレーベルや所属事務所にもそれぞれの権利がある。そしてこれらの版権回収ルートは、それぞれに異なる。そして、オーディエンスは様々なデバイスで音楽を消費し、その対価を支払っている実感さえないことが多い。

Kobaltはデジタルを主戦場とするアーティストと直接契約し、伝統的版権会社と提携を結ぶことで、音楽ビジネスの透明性とコンプライアンスを再構築しているといえる。有史上、音楽が存在しなかった時代はない。常に誰かがアーティストに対価を支払い、オーディエンスは音楽による幸せを享受してきた。ただし、その仕組みは常に変化している。Kobaltは、現代における版権管理の仕組みをリードしている最有力企業であることは間違いない。そして、その軸足はいつもアーティストの権利の側に置いているのである。


出典:
*1 wired.co.uk(2016), Kobalt changed the rules of the music industry using data – and saved it
https://www.wired.co.uk/article/kobalt-how-data-saved-music
*2,*3, Techcrunch(2019), How Kobalt is simplifying the killer complexities of the music industry
https://techcrunch.com/2019/09/11/how-kobalt-is-simplifying-the-killer-complexities-of-the-music-industry/


参考情報:
Kobalt(2019)
https://www.kobaltmusic.com/
AMRA(2019)
https://www.amra.com/

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