Uber、ドライバー向けの金融ローンサービス提供か

ペイデイ・ローン(Payday Loan)という言葉がある。Pay Dayというのは給料日。つまりペイデイ・ローンは次の給料を担保にお金を貸すローン形態のことで、日本流に言えばサラ金となり、同様のネガティブなニュアンスがある言葉だ。

そして、ライドシェアサービスの大手Uberはドライバー向けに金融ローンの直接提供を模索しており、一部のドライバーのアプリにアンケートを送信していたということである。

Voxの記事によるとアンケートの内容は

「過去3年間に(1,000米ドル未満の)少額のローンを利用しましたか?」

「Uberが融資サービスを提供した場合、どのくらいの金額を必要としますか?」

(「100ドル未満」、「100ドルから250ドルの間」、「250ドルから500ドルの間」、「 500ドル以上。」)

といったもの。*1

まだローンサービスの提供は発表されていないが、Uber側にかなりやる気があることも伺える。そして、Uberは既に自社クレジットカードであるUber Cardを提供しており、ドライバーの自動車購入を支援するカーリースプログラムのXchange Leasingも提供していた(現在同事業は売却)。自動車という設備購入と維持を必須とするUberビジネスにとって、金融サービスの提供はドライバーの支援とネットワーク拡大に貢献すると思われそうだが、実際はそうでもない。Uberはドライバーからの搾取ビジネスとして数々の批判や訴訟を受けている。

多くのUberドライバーは移民を中心とした貧困層であり、アンバンクトと呼ばれるアメリカの銀行口座を持っていない人達が多い。つまり、彼らは一般的なアメリカ市民のように金融機関からお金を借りることが難しい。近年のFintechベンチャーは彼らへの資金提供が出来るような新しい金融サービスを模索するものが多く、従来の銀行では出来なかった短期小口のローンを独自の与信モデルで提供することで新しい金融セクターを形成しようとしているが、こういった仕組みは大手企業に取り入れられ、その従業員に向けた、まさに自前のペイデイローンとして活用され始めている。こうなると、本来は貧困者救済を大義名分とした素敵なサービスだったものが、お金を貸し付け、働かせ、給料から天引きする、という搾取のマッチポンプといった構図になってしまう。

Uberはアメリカ社会からこのマッチポンプ組織として睨まれており、多くのメディアはこのUberの動きを「金融支援」ではなく「ペイデイローン」として報道している。ただ、この報道は少しばかりアンフェアである。実はWalmartなどの小売や大手製造業なども同じような従業員向けローンを展開している。金融側としても、一般消費者への貸付よりも従業員向けローンのほうが、支払うべき給料を握っている分、当然回収リスクが低くなる。ただ、問題は、自由な労働と資産共有を背景とするシェアリング・エコノミーの代表格であるUberが、伝統的な労働集約型大企業と同様に、従業員の時間と資産を囲い込もうとしていることであろう。

筆者は2015年からアメリカに数年間住んでいた。就労ビザを持たない移民にとって、Uberでの労働は本当に助けになるものだった。事実、僕の友人も何人かUberドライバーをやっていたが、かなり儲けている人もいたし、空き時間をうまくつかってそこそこ稼ぐタイプもいた。そして彼らは皆、移民だった。あるトルコ人の友人は、政権交代によって職を失った元イスタンブール大学の教授だったが、ニューヨークでUberドライバーをしながら臨時教員として糊口をしのいでいた。車を買おうにもアメリカでのクレジットヒストリーがないのでローンを組めず、貯金を叩いて車を買ったのだという。最近ミラーを壊されたのだが、研究論文の取材のために物入りで、なんとか自分でリペアする、と苦笑いしていた。あのときUberがローンを提供していれば、彼の車はいつもピカピカで、もっと良い顧客レビューを貰えていたのかもしれない。


引用:
*1 Vox.com(2019), It looks like Uber is getting into the small loan business for its drivers
https://www.vox.com/2019/9/6/20853357/uber-driver-direct-loans-payday-small-lorena-gonzalez-ab5

参考記事:
engadget(2019), Uber's next business idea: Lending money to drivers
https://www.engadget.com/2019/09/06/uber-driver-loan-program-survey/

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