以前の記事で、Uberが自社ドライバー向けの金融サービスを模索している、と発信したが、程なく現実となった。
Uberにはその名もUber Driveというドライバー用のアプリがある。基本的に配車リクエストの受領や売上の計算、渋滞情報や最適ルート検索などが機能として盛り込まれている。
10月28日に開催された金融サービスの国際カンファレンス、Money20/20で今回発表されたUber Moneyは、当初ドライバー向けのペイデイローン(消費者金融)ビジネスなのではないか、と取り沙汰されていたが、一般消費者も対象とした範囲で展開される模様。そのサービスの根幹となる機能はUber Walletと呼ばれるものである。Uber Walletはドライバーの売上/支出管理と、送金を可能にする拡張機能のようなもので、先述のUber Driver内に実装されることになる。さらに、一般ユーザー用のUber/Uber Eats上にも段階的に実装されることになる。
UberはイシュアをBarcrays(国際ブランドはVISA)とした自社クレジットカードをほぼ同時に発行。これを利用したキャッシュバックがこのUber Walletに戻ってくる仕組みである。また、この3月に発表されている優待プログラム、Uber Rewards(Uberサービス利用ごとにポイントが貯まる)とも連携する。これらのポイントはUber Cashという残高としてWallet内に保持される。このUber Cashは銀行への送金も可能にする見通し。
つまり、今回発表されたUber MoneyはUber Cashと呼ばれる還元ポイントを管理するための機能であり、Uber Cardを利用すればその効果が最大化されるというサービスであり、先に発表されたApple Pay/Cardとよく似た形態である。消費者は貯まったポイントでUber Copter*1で空港からマンハッタンまでのヘリコプター移動に使えるかもしれない。
さて、今回のニュースで、ドライバー向けペイデイローンの話は出てきていない。一方、UberはこのMoneyサービス発表前の7月にメキシコ大手銀行BBVAと組んでデビットカードを発行*2していたが、今回の発表ではGreen dotと組んでアメリカ市場に対応したデビットカードを発行する。
Green dotはサンフランシスコ初のプリペイドカードのプラットフォームを提供するスタートアップだが、Walmartのプリペイドカードなどを手がけ、GoBankと呼ばれる無店舗銀行サービスも展開している。いわゆるアンバンクド(銀行口座を持てない、もしくは銀行の融資を受けられない人たち)を主要雇用対象者とするビジネスだが、Uberにとってもこのサービス活用は様々なメリットがある。アンバンクドの人々は必然的に現金か小切手決済が主流になる。そしてアンバンクドは貧困層やブラックリスト、不法移民だけではなく、移民や短期就労の人々も含まれるので、金融としても雇用対象としても、アメリカではかなり大きなマーケットである。Uber Moneyの狙いは、この市場へのアクセスに大きな意義を抱いている、と筆者は考える。短期雇用層を拡大でき、彼らにWalletという資金プールの場を提供できる。
そして、彼らのキャッシュフローを把握することで提供できる、独自与信の金融ビジネスを展開できることになる。既に日本でもUber Eatsは浸透し、様々な外国人が働いているが、カードを作れないために苦労している人も多い。(彼らの名誉のために言うが、正当な手続きを経た移民や就労ビザ保持者であっても、銀行口座は開けてもカードやローンを組むことは難しい)
Uber Moneyの日本展開次期は未定だが、アンバンクドにとっては朗報と言えるだろう。
筆者注:
*1
Uber Copter
2019年7月にニューヨークで試験運用が開始された、ヘリコプター移動サービス。JFK空港からマンハッタン東岸のヘリポートまで8分で移動する。今の所は、プラチナメンバーとダイアモンドメンバーのみ利用できる。料金は200ドルから225ドル。
https://japan.cnet.com/article/35138135/引用情報:
*2
Reuter(2019), Uber partners with BBVA, Mastercard to offer debit cards in Mexico, retrieved from
https://www.reuters.com/article/us-mexico-uber/uber-partners-with-bbva-mastercard-to-offer-debit-cards-in-mexico-idUSKCN1TX23N?feedType=RSS&feedName=technologyNews&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+reuters%2FtechnologyNews+%28Reuters+Technology+News%29参考情報:
PYMINTS.com(2019), Uber Money Wants To Be The Bank Account For Uber Drivers, retrieved from https://www.pymnts.com/news/payments-innovation/2019/uber-money-wants-to-be-the-bank-account-for-uber-drivers/
Uber(2019), Uber Money, retrieved from
https://www.uber.com/jp/ja/money/
TechCrunch(2019), Uber Money is Uber’s new team focused on financial products and services, retrieved from
https://techcrunch.com/2019/10/28/uber-money/