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Whatnot ―偽物を掴ませない、新しいマーケットプレースの形

作成者: DXNavigator 編集者|Mar 16, 2020 4:30:42 PM

スニーカーを愛する人ならばGOATやStockXという企業を知っているかもしれない。現在、限定ものやコラボモデルのスニーカーは販売価格の数十倍をつけることも珍しくない。これはデザイン、希少価値、そしてセレブやコレクターによる価値文脈が複雑に絡み合って起こる現象だが、何よりeBayから始まった二次流通プラットフォームの浸透が一役買っている。GOATやStockXはスニーカーに特化した二次流通販売サイト/アプリであり、ナイキやアディダスが正規に販売したスニーカーを仕入れ、市場価値に応じた値付(要は、モノによってはすごく高い)で販売するサービスである。

 

画像:GOAT: Fragment Design x Air Jordan 1Retro  High OG
出典: https://www.goat.com/

 

こういった市場の中でいつも問題になるのは、いわゆる「偽物」のリスクである。10万円で買ったAir Jordan 1が偽物だった場合、あなたならどうするだろうか。筆者なら真実を否定するか、再転売で次の被害者を作ってしまうかもしれない(そもそも、そんな高いスニーカー買わないけど)。とかく、二次流通サービスは暴利を貪る悪者のように思われがちだが、GOATなどのサービスは一定の市場理解を得ている。彼らが「目利き」することによって偽物リスクは劇的に改善されているという。

このモデルを他の商品に適用したのがWhatnotである。

同社はFunko Popと呼ばれるおもちゃの目利きと二次流通に特化したスタートアップで、なんとあの有名アクセラレータ、Y Combinatorの2020年度プログラムメンバーである。

そもそもFunko Popとは1998年に設立されたアメリカの玩具メーカーFunkoが販売する人形で、アニメや映画の登場人物を二頭身の可愛いフィギュアにして販売する。もともとアメリカにはBobble Head(首振り人形)と呼ばれる人形を楽しむ文化があり、メジャーリーグなどのスポーツ選手や有名人は大概Bobble Head化されている。「さっき路上インタビューされたから、明日には俺のBobble Headが発売されるぜ」といったジョークもあるくらいである。ともあれ、Funko Popはより可愛らしくデフォルメされた現代版Bobble Headとして絶大な人気を誇っている。

 

画像:Sith Trooper 出典:Funko.com
https://www.funko.com/products/movies/pop/star-

 

このFunko Pop、既に日本にも上陸しているが、本来の販売価格は$10-$15程度である。しかし、限定もののバリエーションが圧倒的に多く、その希少価値がコレクターに愛され、二次流通でかなりの偽物が出回っている。例えばこのシス・トルーパーはSan Diegoのコミコンで2019年に限定販売されたもので、もう正規販売はしていない。コレクターは、eBayなどのあらゆる手段を用いてこれを探して手に入れるのだが、この労力は大変なものである。まして偽物を掴まされた時のダメージは筆舌に尽くしがたい。

Whatnotはこのコレクターの労力を軽減し、正規品を妥当な値段で提供する。あくまでマーケットプレイスを提供し、仕入れは行わず、売り手と買い手の仲介を行うのだが、Whatnotは商品の審査と配送も担当する。

すなわち、

1.Whatnotのサイト/アプリ上で商談が成立

2.売り手はWhatnotに商品を送付

3.Whatnotは商品を審査

4.問題なければWhatnotが買い手に配送

というプロセスを取る。eBayは出品と決済だけを提供するため偽物や粗悪品の横行が止まらない。この問題を踏まえ、Whatnotは審査と配送も担当することで、商品の品質管理まで面倒を見る。収益源は取引価格の9%の手数料と数ドルの配送料である。

このビジネスモデルは広がりを見せている。先述のStockXはスニーカーが専門だったが、最近はブランド物のハンドバッグや時計、ストリートブランドのアパレルにまで手を広げている。

 

画像:Stock X — Handbags
出典: https://stockx.com/

 

Techcrunchによると、Whatnotはこの2月にプレシードラウンドを完了させ、57万ドルの調達を完了した。また、同社は対応商品の拡大を見込んでおり、ポケモンカードが次の取り扱い商材になる可能性があると述べている*1。

アメリカだけでなく、日本でも二次流通の詐欺被害が広がり、盗品やチャージバック商品の出店など、マーケットプレイスのあり方が問題になっている。世界の消費を変えてきたECとマーケットプレイスだが、そろそろ、構造変革が求められているのかもしれない。

 

引用情報:
*1
Techcrunch(2020), Whatnot wants to be the GOAT of collectible toys, starting with Funko Pops, retrieved from
https://techcrunch.com/2020/02/05/whatnot-wants-to-be-the-goat-of-collectible-toys-starting-with-funko-pop-figurines/
参考情報:
Funko
https://www.funko.com/
http://www.funko.jp/
Stock X
https://stockx.com/
GOAT
https://www.goat.com/
Whatnot
https://www.whatnot.com/