この3月9日(アメリカ東海岸時間)、Amazonは自らが展開する無人小売店舗、Amazon Goが利用している技術群の販売を発表した、と複数のメディアが報じている*1。その名はJust Walk Out。Amazonはこのサービスの説明サイトと同日に発表した*2。同サイトの説明によれば、既存店舗にJust Walk Outの導入は数週間で完了でき、親近店舗の場合は設計からAmazonがサポートするという。また、買い物客はAmazonアプリやアカウントを必要とせず、クレジットカードを持っているだけで選んだ商品が決済されるという。もちろんレジには並ばなくていい。おそらくは入り口のゲートでクレジットカードをかざすかスワイプするだけで良い。
そしてそのわずか2日後、アメリカの主要空港で売店やレストランを経営するOTGがJust Walk Out導入を発表した。最初の導入店舗はニュージャージー州のニューアークリバティ空港のターミナルCで3月16日にはオープン予定、2号店はラガーディア空港となる予定だという*2。
OTGの名前を知らなくても、彼らが展開するサービスブランド、CIBO Express Gourmet Marketを見たことがある人は多いのではないか。同ブランドは、先に上げた2つの空港に加え、ニューヨークのJFK空港、シカゴのオヘア空港、ワシントンDCのダレス空港など東海岸を中心とした10空港に展開中の、食品からギフト、旅行に使える小型家電などを取り揃える、どこの国際空港にも一つはあるいわゆる「売店」である。
Amazonが最初の顧客に「空港の売店」を選んだ点は秀逸である。Just Walk Outの最大の提供価値は、レジに並ばないことである。国内ハブ空港を訪れる人々は忙しい。フライト直前にコーラとスナックを買いたいだけなのに、メニュー選択で右往左往する観光客に待たされて焦った経験のあるビジネスマンは多いだろう。少なくとも、彼らの購買体験は大きく向上することになる。
一つ問題があるとすれば、クレジットカードを持たない買い物客は店舗に入れないことになる、ということだ。アメリカ人で空港を利用するタイプならカード所有率は100%に近いだろうが、日本のような現金主義大国だとそうはいかない。この点、高輪ゲートウェイ駅のTouch To Goに軍配が上がりそうだが*3、逆にこちらは、レジ決済という存在を残してしまった。
Amazon Go/ Just Walk Outはレジ待ちという負荷をなくす顧客価値を提供する。
無人タッチパネル型に簡素化したとはいえ、レジ決済を残したTouch To Goの顧客提供価値は何だろう?Amazonは「Just Walk Outは無人店舗ではない」と主張する。店員の作業を商品説明などのホスピタリティ提供に再配分させる点を強調している。
確かに「無人店舗」はビジネス側のメリットはあれど、顧客視点ではどうだろう?少なくともレジ待ち行列が解消できないのなら、無人店舗を利用するメリットは言語不要であることと近未来体験ぐらいでしかなくなる。とはいえ、Just In Walkがレジ待ちを消し去っても「入り口に行列」を作る可能性もないとは言えない。いずれにせよ価値判断は利用者たる買い物客に委ねられる。
引用情報:
*1
Techcrunch(2020), Amazon is now selling its cashierless store technology to other retailers, retrieved from
https://techcrunch.com/2020/03/09/amazon-is-now-selling-its-cashierless-store-technology-to-other-retailers/
https://justwalkout.com/
*2
Techcrunch(2020), Airport retailer OTG will use Amazon’s cashierless technology starting next week, retrievewd from
https://techcrunch.com/2020/03/11/airport-retailer-otg-will-use-amazons-cashierless-technology-starting-next-week/
*3
PRTIMES(2020), 高輪ゲートウェイ駅 無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」がサービス開始 商品は手に取るだけ!“ウォークスルーの次世代お買い物体験”, retrieved from
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000077.000034286.html