オンライン医療のWeDoctor、満を持してIPOか(中国:香港)

コロナウイルスによって社会と経済が打撃を受ける中国で、オンライン医療プラットフォームのWe Doctor(微医)の上場がほぼ正式に確定した。上場先は香港証券取引所である。

中国ではもともと、既存医療制度の改革、という大きな路線があり、”Healthy China 2030”と呼ばれる国家戦略がある*1。中国の伝統的医療(中医学)を国策で支援しつつも、西洋型医療(いわゆる一般的な病院制度)の評判は芳しくなかったため、大きな改革に乗り出していた。何より巨大な人口をカバーできるだけの医療システムがなかったため、100%の国民が医療サービスにアクセスできるようにすることが大目標である。2020年現在、中国における医療従事者は1000万人を超えるが、同国人口をカバーするには到底足りない。この背景を受け、遠隔医療ビジネスは進展してきた。

杭州で創業したWeDoctorは、2010年設立、当初はGuahao.comという名前だったが、Tencentによる買収からWeDoctorに社名を改名した(ドメインサービオスとしてはGuahao.comを継続)。漢字表記では、WeChatの微信になぞらえ「微医」となった。彼らはいわゆる病院検索ポータルからスタートしているが、そのメインビジネスは遠隔医療プラットフォームの提供にシフトしている。

画像:retrieved from guahao.com

遠隔医療は主にスマートフォン上のアプリで行われ、WeChatとも連携している。自分の症状をスマホ上で入力し、医師にその状況を診断してもらい、適切な処置の指示をもらう。症状の重篤さが懸念されるならば、その診断結果を紹介状として適切な病院への紹介が行われる。診断料は無料の場合もあるが、1回10元(約150円)くらいから受け付けることができる。

同社同等規模のアクセスを誇るライバルのPing An Good Doctor(平安医好生)は2018年にすでに上場し、IPO前には55億ドルの評価額を有しており、ソフトバンク・ビジョン・ファンドも出資している。一方のWeDoctorは同時期の上場を目指していたが諸事情により断念。このコロナ禍の最中の上場発表は驚きをもって報じられている。

世界不況が予測される最中とはいえ、コロナ禍はWeDoctorの存在感を大きく知らしめることになった。WeChatを媒体とした同社の遠隔医療サービスは遠隔診断に大きなインパクトを与えた。ライバルのPing An Good Doctorはコロナウイルス関連でアクセスが11億まで伸び、新規会員登録数も通常の10倍を記録したが、WeDoctorも同等規模の伸びを見せていいるという。中国のリサーチ会社、Equal Oceanによると、当初2020年の中国のオンライン医療市場は158億元と推定されていたが、コロナ禍発生によって2,000億元(290億米ドル)近くになると見られるという*2。

WeDoctorのコンピテンシーは、1000人を超える医療従事者を背景にした、実はアナログな診断環境である。プロの医師による対話形式で診断を行い、デジタル上のプロファイルを蓄積し、かかりつけの医師や転院先に共有できる状態を作るのだ。これは、アリババが提供するAliDoctorも同じである。一方のPing An Good DoctorはAI主導である。とにかく症例、診断、結果をAIに「食わせる」ことで医療診断そのものを自動化する方向性である。

いずれにせよ、中国はこのコロナ禍によって、世界の誰もが経験したことのない医療システムを構築するかもしれない。少なくとも、今の中国ほど、国民が遠隔医療のありがたみを感じ、支えを実感している市場は他にないだろう。

WeDoctorがこの市況の中、億万長者への道を進めるかどうかは不明であるが、現状での推定総定評価額は41億ドルから68億ドル、幹事証券会社はゴールドマン・サックスを予定しているようだ。

*1 WHO(2016), Healthy China 2030 (from vision to action), retrieved from https://www.who.int/healthpromotion/conferences/9gchp/healthy-china/en/
*2 Equal Ocean(2020), Will WeDoctor Be the ‘Billionaire Doctor’?, retrieved from
https://equalocean.com/healthcare/20200307-will-wedoctor-be-the-billionaire-doctor

[参考情報]
https://www.guahao.com/
https://www.jk.cn/

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