現在、医療従事者に必要なコロナウイルス感染対策グッズは全世界的に枯渇しており、二次感染や院内感染、そして医療崩壊の大きな一因になっている。その重要グッズのうちの一つが、医療用メガネである。
Techcrunchによれば、3Dプリンターを活用したアイウェアを製造するFitzは、医療従事者向けのカスタムフィットメガネを製造し、無償で提供を開始する。アメリカの医療従事者のうち60%はメガネを使用している。メガネに対応した医療用ゴーグルやシールドは供給量が少なく、コンタクトレンズは感染防御の観点から推奨されないというガイダンスが出ている。すなわち、防御機能のあるメガネは、医療従事者にとって極めて重要なグッズとなる*1。
画像 Fitz社サイトより抜粋。https://www.fitzframes.com/fitz-protect
同社が提供するFitz ProtectはiPhone PROで適用されているFace IDカメラによる深度感知機能を利用して、ミリレベルでのカスタムフィットを実現する。もともと、Fitzは子供や老人など、通常のメガネではフィットが難しい層に合わせたカスタムメガネを提供するD2Cのスタートアップで、2016年にLos Angelsで創業した。消費者は、専用のiPhoneアプリで測定し、好きなフレームを選び、購入する。レンズの度数は別途提出義務がある処方箋に準拠する。3Dプリンターで作成されたフィットチェック用モデルが郵送され、OKであれば度付きの本製品が郵送される。あの有名なWarby Parkerとほぼ同様のモデルだが、大きな違いは3Dプリンターによる完全フィットを目指すことで、子供用などのサイズカスタムがミリ単位で可能なこと、そして、サブスクリプションモデルで交換自由なことである。同社商品は、送料込みで95ドルだが、年間185ドルのサブスクリプションプランでは何度でもフレームの交換が可能である。このサブスクリプションサービスプランが、医療従事者向けには無料で提供される。製造コストは寄付によって賄われる。
画像 Fitz社サイトより抜粋。https://www.fitzframes.com/fitz-protect
Techcrunchの同記事によれば、現在メガネを着用している医療従事者は防御シールドがなくてダンボールなどで露出面をカバーしているという。
Fitzの試みは、蔓延するコロナ禍への貢献として称賛されるべきであるが、同時に3Dプリンターがカスタム需要へ完璧な対応を可能にする、ということを改めて我々に教えてくれている。さらに、iPhone上でサイズフィットが完結し、店舗に行かなくても配送で受け取ることができるというモバイルコマースの利点が存分に活かされている。アメリカの場合、メガネ購入に眼科処方箋が必須であることだが、Warby Parkerが既に視力検定アプリを開発しているので、いずれ法的な問題も解決されるだろう*2。
COVID-19の蔓延による医療従事者への支援は世界的な動きであり、1年以上の長期的なものとなるだろう。企業が社会のためにできることはまだ沢山ある。そしてその挑戦は、結果的にDXに結び付くことになると筆者は確信している。
引用情報:
*1
Techcrunch(2020), 3D-printed glasses startup Fitz is making custom protective eyewear for healthcare workers, retrieved from https://techcrunch.com/2020/04/20/3d-printed-glasses-startup-fitz-is-making-custom-protective-eyewear-for-healthcare-workers/
*2
Techcrunch(2017), Warby Parker’s Prescription Check app lets you skip the eye, retrieved from https://techcrunch.com/2017/05/23/warby-parker-prescription-check/参考情報:
Fitz
https://www.fitzframes.com/