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RPAのBizteXが6.3億円調達 ―iPaaSはボットをクビにする?

作成者: DXNavigator 編集者|Jun 4, 2020 4:30:07 PM

RPA(Robotic Process Automation)という言葉が浸透して久しいが、コロナ禍を起点に導入が進むソリューションとして再び注目を集めている。

 

Techcrunchによれば、クラウド型RPAを提供するBizteXはこの4月20日、総額6.3億円の調達を完了した。調達の目標はiPaaS領域への事業拡張であるようだ*1。

 

非常に乱暴に言えば、RPAとは「ボットによるルーティン処理の自動実行」である。ボットとは、単純な処理を実行するプログラムやアプリケーションのことを指し、我々の日常生活の中にもボット処理によって成立しているサービスは多い。もっともわかりやすいのは、テキストにAIを駆使して返信するチャットボットであろう。利用者がLINEの企業アカウントにテキストを送信すれば、そのテキストに該当する解答やコンテンツをチャットボットが返す。これが音声になると、SiriやAlexaになる。これを業務処理に使うとき、RPAという呼び方になる。

 

  • 毎朝10:00に競合サイトの価格を調べてファイル化する。
  • 日時処理の複数の集計データを一つのエクセルでまとめ、報告書にする。
  • SEOのキーワードトレンドを集め、分析用のデータソースを作る。
  • 経費精算の項目チェックを行い、エラーを撥ねる。

 

などなど。

 

単純にして面倒なソフトウェア事務は異常なほどに存在する。RPAはこういったルーティンをボットで自動化することで、業務効率を大幅に改善するわけだが、その利点の一つは、既存システムにほとんど手を入れないことである。データベースと直接連携するわけではなく、ボットが人間の操作とほぼ同じことを超高速で行うのだ。ルーティンなので、その作業プロセスはロジックにできる。ロジックになれば、ボットが処理できる。ボットがルーティンを実行できれば、人間は浮いた時間をより生産的な行為に使うことができる。すなわち、考え、意思決定を行うために多くの時間を割けるようになる。

下記はシンガポールのCFB Botsという企業の説明動画だが、RPAのボットが何を行って、人間よりどれだけ早いかをわかりやすく説明している。

 


動画:Youtube.com(2020), Robotic Process Automation - Human vs Robot, retrieved from
https://www.youtube.com/watch?time_continue=104&v=ShdaSYcNKYw&feature=emb_logo

 

 

一方のiPaaSとは、複数のSaaSをAPIでつなぎ、データ統合やシステム連携を可能にするプラットフォームの略称で、Integration Platform as a Serviceの略である。様々なシステムのクラウド化が進み、多くの企業データはクラウドのどこかに格納されるようになったが、各サービス単体(SaaS)のクラウド移行が先に進んだので、複数のSaaSを使う企業が増え、データがクラウド上に分散することになった。これを繋ぐのがAPIだが、これまでは、各サービスごとに連携させる必要があった。たとえばSalesforceとAdobeを連携させる場合、双方でつなぎこみの連携開発が必要になる。また、まだ残っているオンプレミスとのデータ連携にも問題があった。複数のSaaSとオンプレミスデータを連携させるには、契約しているSaaSの数だけ連携開発が必要になる。何より、リアルタイム性が問われる昨今において、数秒単位という高頻度で複数報告から中央のデータベースをキックするような仕組みでは、既存のオンプレミスシステムでは運用に耐えられない。iPaaSはその中間に入って、データを統合する役割を持つ。複数のSaaSデータをiPaaS上で統合し、オンプレミスとも連携する。現在、この領域を牽引するのはInformaticaと言われているが、2018年にSalesforceがiPaaS企業のMuleSoftを、DellもBoomiを買収、MicrosoftやOracleもiPaaS領域に本格参戦を開始している。

 

そして、RPAもまたSaaSの一つであり、企業に必要なデータを生成する処理の一つでもある。これまで、RPAは巨大企業の事務処理自動化というイメージが強かったが、欧米では中堅規模企業も積極的に利用しはじめている。日本でもこの傾向は進むだろう。先述のBizteXはミドルエンタープライズ、すなわち中堅大企業を主体として伸びているが、地方中小企業の実績も多い。その利点は、導入費や月額料金の安さと、グッドデザイン賞を受賞した使いやすいUIであることは間違いないだろう。RPA企業は皆、次のステージを狙っている。以前紹介したアメリカのRPA企業、UiPath社もフロントオフィス自動化の領域に進出するため昨年5.68億ドルを調達している。

 

COVID-19蔓延によって出勤が抑制される状況はしばらくの間続くだろう。RPAは、毎日出勤してやるほどではないルーティンワークを自動化するのは間違いない。しかし、その自動作業を代行するボットも、APIによる直接接続が進めばいらなくなる。その答えの一つがiPaaSの利用であろう。複数SaaSからのデータ移行、統合を手作業で行っていた企業のルーティンを劇的に減らすことができる。コロナ禍はRPAという名のもとに「企業のボット採用」を促進していくことになるだろう。その次はiPaaSの浸透によって「ボットが失業」する時代かもしれない。何れにせよ、コロナ禍が人間がルーティンから解放される時代を加速する可能性は高い。

 

引用情報:
*1
Techcrunch(2020), クラウドRPAとiPaaSの二刀流で企業の業務自動化を支援へ、BizteXが6.3億円調達,
retrieved from https://jp.techcrunch.com/2020/04/20/biztex-fundraising-pre-series-b/ ,2020.06.05

参考情報:
Infomatica https://www.informatica.com/jp/
Mulesoft https://saas-search.jp/journal/ipaas/
Boomi https://boomi.com/ja/platform/

※編集部注:TechCrunch Japanの引用記事は、引用当時に存在していたURLを掲載しています。同サイトは2022年5月1日にて閉鎖となるため、リンク先記事が消失している可能性があります。