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3.「管理重視型マネジメント」と「取引先営業」のアナログな関係

先述のように、生産・物流部門は生き残りのために先手を打ってい動いている。最大の経済停滞の要因は消費の落ち込み一点に尽き、これさえなんとかなれば、コロナ状況下でも企業が生き延びる足腰は健在なのである。その中で、再生の鍵を握りながらも、最もデジタル化の遅れを露呈するのは営業・販売部門である。何故なら、アナログ手法による提供価値が依然として高く、それが故にデジタル化を拒む文化があるからだ。このことは、先程のマネジメントの意思決定からの逃避と密接に関係している。彼らのような管理職にとって、取引先の営業は非常に便利な無料社員でもある。課題解決策を提案し、社内に通す資料を作成し、判断すべき情報や意思決定の領域を狭めてくれるのだ。商談プロセス自体がデジタルで合理化されれば、管理業型マネジメントはもとより、彼らの分析・意思決定業務を事実上無料代行していた取引先の営業職が存在意義を失う。言い換えれば、マネジメントに意思決定力(権力のことではない)があれば、御用聞き営業は通用しない。

今後断続的に緊急事態宣言が繰り返されることが想定され、小売店舗の平均稼働率は平常時の70%もあれば御の字では無いだろうか。もちろん、取引先自体が出勤していないのだから、営業活動の多くもリモート化せざるを得ない。つまり、デジタルショールームやコマースの販路が無ければ、以前よりモノは売れなくなる。B2Cならばデジタル販路の整備は死活問題になってくる。自動車や家具などの大型で高単価な商材も、顧客接点である無人ショールーミングだったり、来店予約が鍵になってくる。B2Bならば、具体的な商品説明スペック開示を併せ持つ、取引先との販売プラットフォーム、すなわちアリババのようなモール型のマーケットプレイスだったり、独自の電子入札や調達の仕組みが以前にもまして必要になってくるだろう。もちろん、先述の電子契約の整備も重要だ。そして、新規営業はインサイドセールスが極めて重要になるだろう。問い合わせからリード見込み客化までをデジタル上で行い、クローズ案件を営業に引き渡す仕組みは主流になっていくだろう。

営業活動におけるアナログな価値とは、顧客とのコミュニケーション量であり人間関係である。足繁く客先に通い、所属会社と自分を好きになってもらい、裁量権を持つライトパーソンを見つけ出し、もっとも顧客が喜びそうで、競合よりも魅力的な提案を仕上げる。CIAエージェントのような観察力と様々な諜報活動に基づいてミッションをコンプリートするのがいつの時代も営業の誇りである。顧客コミュニケーションはその諜報過程に必須なものであり、営業活動の大半がその「量」に費やされてきた。1990年代にSFA導入が進み、殆どの企業が営業管理ツールを使うようになったが、その実態は先述の管理業務型マネジメントの雑務を助けるものでしかなく、大企業の営業の効率はあまり上がっていないように思う。日報が電子化され、SFAへの案件進捗が義務化されても、営業会議の大半は案件進捗報告に費やされる。筆者が営業職に就いていたのは1990年代後半だったが、2020年の現在の営業職を見ても、根本的な動き方や価値観はあまり変わっていない。変わったのはSFAがクラウド化してアプリでも使えるようになったことくらいである。業種にもよるだろうが、デジタル技術がこれだけ進み、様々なツールが導入されても、営業プロセスはこの20年以上変わっていないのではないか。

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