やはりといえばやはり、ということになるが、コロナ禍を過ぎた中国において、テンセントの収益は好調である。調査会社Equal Oceanによれば、新型コロナウイルスの社会封鎖期間と見事にかぶった同社第1四半期の業績は、前年比26%増の1080億元(約1兆6277億円)、その中でオンラインゲームの売上は31%の上昇したという*1。
テンセントといえば、WeChat(微信)やQQが代名詞的サービスであり、日本でいうLINEのような企業イメージであろう。しかしその収益の多くはオンラインゲームによって賄われる。同社の収益は大きく分けて3つ、Value Added Service(VAS)、Online Advertising Service,、そしてOtherであるが、下記のEqual Ocernによる分析チャートの通り、売上の60%程度がVAS、40%強がその他サービスである。
出展:Equal Oceean(2020), 下記*1記事中から引用
テンセントの基本戦略はBuild Connection、 すなわちコネクションの構築である。WeChatのような会話アプリ、QQのようなインスタントメッセンジャー、そしてQzoneのようなSNSでユーザーのコネクションサイズを作り、その中で付加価値サービスを提供して課金収益を得る。この課金収益がVASの中心となる。このVASの構成を更に細かく分解すると、Social Networks、Online Games、 FinTech&Business Service、 そしてOthersとなるのだが、実に35%の収益がオンラインゲーム課金から得られている。テンセントは、ライバルのアリババに次ぐ中国第二位のEコマースモール、ZD.com(京東)も、QR決済で有名なWeChatも持っているが、これらの収益はFintech&Business Serviceの一部である。そして、少なくとも2017年から現在まで、オンラインゲームは最大収益源であり続け、躍進中のFinTechがこれを超えたことはない。
出展:Tencent(2019), retrieved from https://www.tencent.com/attachments/ResultsPresentation2Q19.pdf
コロナ禍において経済全体が痛む中でも、テンセントは依然として増収増益を続けている。中国経済を牽引しているデジタル企業の雄は、コロナウイルス危機において凹むところかその存在感をさらに強くしている。都市封鎖中、武漢市でのロボット配送やJD.comでのマスク価格高騰抑制*2、We Doctor(微医)で、オンライン医療を促進した姿勢は記憶に新しい*3。
一方のライバルであるアリババは、小売流通中心の売上構成が災いし、第1四半期はマイナス予想と報じられており*4、この2強は明暗を分けた形になった。テンセントは、これまでオンラインゲーム偏重の売上構成から脱却するために腐心してきたが、コロナ禍においては逆に幸いしたと言えるだろう。少なくともテンセントは、この人類史上稀に見る災厄を凌いだどころか味方につけ、収益的にもブランド的にも大いに成功したといえるだろう。
引用情報:
*1
EqualOcean(2020), Tencent beats earning consensus after stay at home gaming drives revenues, retrieved fromhttps://equalocean.com/high-tech/20200514-tencent-beats-earning-consensus-after-stay-at-home-gaming-drives-revenues
*2
DX Navigator(2020), 中国主要ECプラットフォームが連携してマスク高騰抑制−コロナウイルス対策に国内が団結, retieved fromhttps://dx-navigator.com/2020/02/13/chinese-e-commerce-platforms-restrain-mask-price-spikes/
*3
DX Navigator(2020) , オンライン医療のWeDoctor、満を持してIPOか(中国:香港), retrieved from https://dx-navigator.com/2020/03/24/online-medical-wedoctor-ipo-china-hongkong/
*4
WWD Japan(2020), アリババ、新型肺炎の影響で第4四半期の売り上げ減少を示唆 傘下の物流会社は通常の2割以下の稼働率, retrieved from https://www.wwdjapan.com/articles/1030632