この6月13日、宇宙開発のSpaceXは通信衛星を新たに58基打ち上げたことを発表。これによって同社が打ち上げたブロードバンド通信衛星、Starlinkは通算538基となった。また今回始めて他社と積載スペースを共有し衛星画像解析サービスなどを手掛けるPlanet社の衛星3基を宇宙まで運んだ、とTechcrunchが報道している*1。
この発表が意味するものは大きく2つ。衛星間ブロードバンド通信の実用化が現実味を帯びてきたこと、そして衛星打ち上げの「ライドシェア」、つまりSpaceXのロケット輸送代行ビジネスが始まったことである。TechCrunchの同記事によれば、同社は北米にて衛星を活用したブロードバンド・インターネットサービス展開を目指しており、また、Rocket Labなど打ち上げ代行に特化したサービスが既に出現しており、SpaceXとしては市場競争力を知らしめておく必要があった。
ここからは筆者の推測にもなるが、衛星ブロードバンドが実用化されれば、まず山岳地などケーブルも電波通信も行き届かない場所にブロードバンド環境を提供できることになる。つまり、ロッキーやK2の山頂でも動画配信が可能になるし、カナダの山奥にビジネス拠点を置くことも可能になる。コロナ禍によって過密化を避ける傾向は世界規模で進むだろうが、山間部や森林部でもブロードバンドが可能になれば、リモート作業場所の可能性は膨らむ。また、衛星間のリレー通信が可能になれば、宇宙空間でも高解像度動画の通信が可能になる。宇宙空間からの撮影、作業状況の配信だけでなく、デブリの監視や天体観測にも大きなインパクトを与えることになるだろう。
何よりも、いつの間に500基もの衛星を打ち上げていたのか、と驚かされる。
ちなみに、このプロジェクトはアメリカの連邦通信委員会(FCC)の農村地区向けブロードバンド実用化の巨額助成金取得を目指したものと推察されているが、その応募締切は7月15日、それまでにFCCが求める低レイテンシーを実現させなければならない*2。ちなみにこのStarlionkプロジェクトは、もしかしたらSpaceXからスピンアウトしてIPOするかもしれない、とこの2月に報道があった*3。FCCの基準が通れば、イーロン・マスクは有線、無線に続く第3の通信インフラの王として名を馳せるのかもしれない。
引用情報:
*1
Techcrunch(2020), SpaceX launches 58 more Starlink satellites and 3 Planet Skysats for first rideshare launch, retrieved from
https://techcrunch.com/2020/06/13/spacex-launches-58-more-starlink-satellites-and-3-planet-skysats-for-first-rideshare-launch/
*2
TechCrunch(2020), SpaceX will have to demonstrate Starlink internet’s low latency within the next month to qualify for up to $16B in federal funding, retrieved from
https://techcrunch.com/2020/06/15/spacex-will-have-to-starlink-internets-low-latency-within-the-next-month-to-qualify-for-up-to-16b-in-federal-funding/
*3
Bloomberg(2020), Musk’s SpaceX Plans a Spinoff, IPO for Starlink Business, retrieved from
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-02-06/spacex-likely-to-spin-off-starlink-business-and-pursue-an-ipo
参考情報:
SpaceX(2020), STARLINK MISSION, retrieved from
https://www.spacex.com/launches/