匂いや味をデジタルで管理できるのか?
リモートワークになってから、より一層料理の味にうるさくなってきた筆者は、「味」をデジタルで制御するなど到底無理で遥か遠い未来の世界のことだと思っており、このニュースを見たとき、驚いたとともに「ここまできたか」と思った。
外食産業の調理の現場においてAIやロボット技術を取り入れた自動化に取り組むTechMagic株式会社が「味」を可視化・監視するIoTツールを開発したという*1。
仕組みは至ってシンプル、寸銅鍋のなかにセンサーを沈め、鍋の内側の温度、液量、塩分濃度、BRIX濃度、外側の気温、外気圧、湿度、加速度をリアルタイムでグラフや数値としてクラウドに記録し、異常値が出た際には通知が届き、早急に対策ができるという。
BRIX濃度というのは液中に溶けている物質の「濃度」を計測した数値で、これによって味の濃い・薄いをセンサーを使って計り知ることができる。
クラウド上で管理されるこれらのデータは遠隔地でも確認することができるので、本部に管理者を置くことで何店舗分もの味の管理ができるようになるという。
プレスリリースより:https://techmagic.co.jp/senser-device/
オープンキッチン方式のような、本部から送られてきた調味料を鍋に投入して温めるだけの調理のパターンであっても、その日の気温や機材の調子などで味のばらつきが出てしまうことも珍しくない。常連さんに「今日は味が違う」と眉をひそめられるようなときでも、店舗の従業員ができることは意外に少ないのだ(もちろん熟練のスタッフには例外の方も多いが)。しかし、本部や遠方にいる管理者が鍋の状況を把握しており的確な指示が出せればその場で味は担保され顧客の満足度も上々となるであろう。
TechMagicの技術が意味するところは、たとえば海外展開した店舗の「味」のハンドリングまでも日本国内でできるようになるということであり、「日本のあの味を食べたい」と切に願う海外在住者にとっても大きな希望の一途であると筆者は考える。
また同社のプレスリリースによると、外食産業の人手不足、コロナ禍の非接触の人材管理、食品に関する健康被害防止を科学的根拠を基に管理を行うHACCP(食品衛生管理)*2の課題にも大いに役立つという。現在はPoC作業が完了し、店舗での実証実験が予定されている。
引用情報:
*1
Prtimes(2021), いつもの味をどの店舗でも安定提供! TechMagicが「味」を可視化・監視するIoTツールを開発, retrieved from
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000046356.html
*2
公益社団法人日本食品衛生協会(2021),HACCPによる衛生管理とは, retrieved from
http://www.n-shokuei.jp/eisei/haccp_a.html参考情報:
Techmagic(2021),
https://techmagic.co.jp/