TikTokはこの8月、Shopifyとの提携拡大を発表した。北米の主要Shopifyショップオーナーと組んで機能拡張のパイロットテストを行うという。
2020年、TikTokはWalmartとの二度にわたるライブショッピングイベントを展開し、その手応えを感じていたようだが、同年10月にはShopifyとの提携も発表。Shopifyショップ管理画面からTikTok for Business アカウントに広告を打てるようになるというもので、2021年2月から実装された。もう少し正確にいうと、Shopifyショップ管理画面でTikTok動画を作成でき、Tiktok上での商品プロモーションが可能になる。もちろんShopifyショップへの誘導も可能だ*1。
Techcrunchによると、今回のパイロットテストは、プロダクトタグを発行できるようにするもの。つまり、特定商品のタグをハッシュタグのように発行し、そのタグを付けた動画は、商品購買ページに直接ジャンプさせることができる。つまり、様々なインフルエンサーが、紹介したい商品にタグを貼ることができるのだ*2。
このプロダクトタグの使い方として、インフルエンサーをアフィリエイターとして雇うことが考えられるだろう。つまり、人気クリエイターに商品紹介動画を作成してもらうことだ。Walmartが行ったTikTok上のライブコマース実験はまさにこれ。このプロダクトタグ機能実装によって、Shopifyに店を構える大小のマーチャントが動画コマースのインフルエンサーマーケティングを展開できる。
もう一つは、タグが独立して拡散したときの効果である。TikTokクリエイターは、無報酬で好きなものを紹介するミレニアルたちに支えられている。好きなブランドを自分の意志で紹介する人たちは大人が思っている以上に多い。そんな「ピュア」なファン層たちが、任意でプロダクトタグを貼り付けるだけでも拡散効果は高いし、いくばくかのアフィリエイト費を払ったとしても、草の根の流入面を確保できるとしたら、CMのような伝統的動画広告よりも費用対効果は高くなるかもしれない。
Shopifyは様々なサードパーティ・アプリを使うことでメディア連携や機能拡張を可能にする設計思想を用いている。彼らのアプリのマーケットプレイスは現在6,600以上のアプリが存在し、その中の一つがTikTok for Businessである。レアでユニークな体験を欲するミレニアルの圧倒的な支持を得ているTikTokと、量販店には出回らない商品展開が基本のD2Cを主要とするShopifyの相性が良いことは容易にできる。また、WalmartはTikTokの買収に参加しているが、その目的はミレニアル層の取り込みであることは間違いない。そして、Amazonの買収に参加し、動画コマースへの展開を開始した。そして、この買収と同時に、TikTokはアンチ・アマゾン陣営に入ったことにもなる。
TikTokの展開拡大は、アンチ・アマゾン陣営の拡大と言い換えることもできるだろう。
参考情報:
*1 PRTIMES(2021), ShopifyとTikTokが日本での提携を発表 Shopifyの管理画面からTikTokへの広告出稿が可能に, retrieved from https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000034630.html
*2 TikTok(2021), New ways to discover and shop on TikTok, retrieved from https://newsroom.tiktok.com/en-us/new-ways-to-discover-and-shop-on-tiktok