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ヤマトホールディングス、DXのためのアカデミーを開校

作成者: DXNavigator 編集者|Oct 29, 2021 7:00:00 AM

配送大手のヤマトホールディングスは、2017年に新規部署、Yamato Digital Innovation Centerを立ち上げ、デジタル活用による変革に本腰を入れた。2019年にYamato Digital Transformation Projectと名称を変え(通称「YDX」)、専用サイトを立ち上げて情報の公開を積極的に展開している。「R&D“+D”」(Research and Development + Disruption)をミッションに掲げる同部署はもちろん、デジタル活用による同社のビジネス改革を主導することが期待されているが、そのスケールは大きく、多岐にわたる。

2019年に発表されたeVTOLプロジェクトも、YDXが牽引している。eVTOLとは垂直離着陸可能な電動の無人航空機であり、米国のBell Helicopterとの共同開発。貨物を運ぶ専用ポッドとともに実証実験がすすめられている*1。ビッグデータ解析は当然のこと、スタートアップの発掘やアライアンス、ハッカソンなどのイベントを積極的に進めている。またヤマトホールディングスが所有するファンド、KURONEKO Innovation Fundと連携して、発掘したスタートアップに向けた資金面での支援も積極的に展開している*2。

そのYDXがこの4月に開始したのがYamato Digital Academy。「全社員がDX人材になるための”学校”」として、役員から新入社員、さらには入社予定の学生も含めたDX教育を展開するもの。ZDNETの記事によれば、カリキュラムの作成は、デジタルハリウッドが運営するエンジニア養成学校、G’s Academiyの協力を得ているという。特徴的なのは、DX育成カリキュラム内には、データサイエンスやプログラムだけではなく、ビジネスデザイン、アーキテクト、UXなどまでが含まれている点。そして、マネジメント層を含めた非エンジニア職も教育対象としている点である*3。

DXはデジタル技術に立脚した変革であることは間違いない。だからといってエンジニアがいればDXが成立するわけではない。ましてや、強力なツールやデバイスを導入したり、プラットフォームを改善することがDXではない。DXによって社会に提供する価値変革は何なのか?今の業務がデジタルでどう変わるべきか?そして、組織はどうやってサプライチェーンを変え、価値提供プロセスを変えるのか?

DXをデジタル化やR&Dと捉えず、デジタルというキーワードで自分たちがどう変わるべきなのかを個々と組織で考えて実践する土台作りにヤマトホールディングスは取り組んでいる。

昨今、リモート化が進んでeラーニングやウェビナー研修を導入している企業は多いが、企業側のWILLと目指すべき方向性をカリキュラム編成まできちんと落とし込んだケースは極めて稀である。実際、こういった教育による組織のパワーアップには時間がかかる。短期的な成果に結びつけるのは難しいかもしれない。しかし、こういった「DX知識の裾野」を広げることに力を費やせば、足元のしっかりした、より高い山が出来上がる。何より、基本素養としてのDX知識と価値観が社員に浸透すれば、知識ギャップで話が進まない、理解が得られないという無駄なコミュニケーションコストが大きく削減されることになり、DXプロジェクトの達成力や先鋭度は未来に向かって増していくことだろう。

YDX,そしてアカデミーの存在は、ヤマトホールディングスのDXに対する視座の高さとアプローチの深さを体現しているのかもしれない。

 

引用記事:
*1
ヤマトホールディングス(20199, 貨物eVTOLシステムを用いた空輸/ラストワンマイル一貫輸送サービスの2020年代前半のサービス導入に向けた機能実証実験に成功, retrerved from
https://www.yamato-hd.co.jp/news/2019/20190827.html
*2
YDX(2021), https://www.yamato-dx.com/
*3
ZDNET(2021), ヤマト運輸が自社でDX人材を育成する学校--「Yamato Digital Academy」に迫る, retrieved from https://japan.zdnet.com/article/35176713/