Amazon Fresh 月額料金廃止へ − 競争激化の中で差別化
Amazonは、生鮮食品の配送サービス、Amazon Freshの月額利用料を無料にすると発表した。Amazon Freshは有料会員であるAmazon Prime会員が、更に月額料金を支払うことで提供を受けられるサービスである。アメリカでのAmazon Primeの会費は月額12.99ドル(年払いだと119ドル)の一方で、Amazon Freshは月額14.99ドル(年払いだと179.88ドル)であり、Freshのほうが料金が高かった。月額利用料の無料化により、Prime会員の一無料サービスとして機能することになる。同時に、注文後1時間配達などの即配オプションも追加される予定。Vox.comなどの記事によると、無料配送のための最低注文額は35ドル、ニューヨーク市内は50ドルと設定されており、アメリカ国内2000都市以上で利用可能である。
この背景には、スーパーマーケットを取り巻くラストワンマイル戦争の影響が見て取れる。今年の夏、Walmartは月額12.99ドルで何回でも配送無料のDelivery Unlimitedを発表。また、同じくGMSのTargetも年額99ドルの有料会員に無料配送サービス提供を、Walmartと同タイミングで発表している。スーパーマーケットの配送で急成長を遂げ、AmazonにWhole Foodsを取られたInstacartも昨年、年間99ドルでの無料配送に踏み切った。*2
実際、Amazon Primeには無料ビデオや書籍、ミュージックなどの付加サービスも含まれており、Walmartなどのサービスと一概に比較はできないだろう。しかし、競合スーパーが食品配送のために12.99+14.99=27.98ドルを月額支払うのはどうにも無理がある。WalmartもTargetもAmazon Fresh以下の価格で注文できるし、同価格帯のInstacartを使えばCostcoだって配送が可能である。
AmazonはFresh会員数を未だに発表していないが、成長は芳しくないと様々なメディアが予測している*3。 ネットスーパーの最先発で最有力だったAmazon Freshは、月額14.99ドルという大きなサブスクリプション収益を捨ててまで、競争力を高めなければならない自体になっている。裏を返せば、それだけ生鮮宅配の需要が高まっているということだろう。
ちなみにこの無料化は、日本のAmazon Freshサービスに適用されないが、この9月にマイナーチェンジが施されている。engadgetなどによると、現状日本でのFresh会員は月額500円だが、今後プライム会員であれば(Freshサービスの契約をしていない人でも)、Amazon Freshを1配送390円で利用できる。*4
引用情報:
*1
Vox.com(2019), Amazon’s new plan to dominate grocery delivery: making AmazonFresh totally free for Prime members, retrieved from
https://www.vox.com/2019/10/29/20936984/amazon-prime-grocery-delivery-fresh-fee-whole-foods-instacart
*3
Grocery Dive(2019), Amazon's online grocery sales growth slowed in 2018, report says, retrieved from https://www.grocerydive.com/news/amazons-online-grocery-sales-growth-slowed-in-2018-report-says/546158/
*4
Engadget(2019), Amazonフレッシュの料金プラン改定。ライフと提携した生鮮食料品のオンライン販売も, retrieved from https://japanese.engadget.com/2019/09/12/amazon/筆者注:
*2
Whole FoodsとInstacartは資本提携下にあり、ネット注文の配送業務はInstacartが行っていたが、Whole FoodsがAmazonに買収されたことで自動的に提携解消となっていた。