縁の下の力持ち、FintechのPlaidをVISAが53億ドルで買収

誰もが利用しているのに、誰もが知らないサービスは多く存在する。例えば我々がアプリ決済をしたとき、その引き落としはスマートフォンに紐付けたカード会社が代行している。しかし、銀行に繋ぐとなると話は別だ。例えば証券取引や仮想通貨で得た収益を銀行口座に戻すときはどうだろう?またPaypayなどのペイメント残高の場合は?Mercariは?Paymoは?これらの金融アプリがこのような資金移動をサービス化するには資金移動業のライセンスを取るか、同ライセンスを保有する企業に業務を委託する必要がある。日本でペイメントサービスが浸透し始めたのは、資金移動業に関する規制を金融庁が緩和したからであるが、その背景には欧米でのFintech隆盛による先行ケースがあるからだ。この辺の背景は別の機会に書かせていただくとして、PlaidとVISAの話をしよう。

Plaidは2020年新年早々、事業売却を発表した*1。買収先はあのVISAである。金額はなんと53億ドル。大型買収の多いFintech業界だが、この金額は歴代トップクラスである。

Plaidは送金インフラを提供する企業である。もう少し正確に言えば、銀行口座にアクセスし、口座情報を取得し、送金処理を実行するためのサービスをAPIで提供する。PlaidのAPIを使えば、決済などの金融サービス・アプリを提供する企業は、銀行APIと接続する自社送金ネットワークを開発しなくてもいい。必要なのはPlaidとの接続と素敵なUIの開発である。PlaidはUIを持たない。送金技術だけを提供する。よって、ほとんどの一般人は、Plaidの名前すら知らない。それでも、割り勘アプリのVenmo、仮想通貨のCoinbase、モバイル証券取引のRobinhood、更にはカード会社のAMEXまでもがPlaidのAPIを利用して金融サービスを提供している。さらに、同社発表によるとPlaid APIはChaseやCiti、Wells Fargoなどの主要銀行を含めた9600の金融機関と接続している*2。

2019年、VISAはライバルのMaster Cardと競うように、活発にM&Aをかけてきた。POSゲートウェイ企業Payworks、ペイメントのVerifi、国際送金のEarthportなどを立て続けに買収しているが、ここにきて次世代決済ネットワークの大元締めを握った形になる。Plaidをアプリのインフラとして利用している企業は既に1700を超えており*3、今後も増えるのは間違いない。Plaidは、9600の金融機関にアクセスでき、送金機能だけでなく、認証や与信の引当も実現する。これを一から構築するには莫大な時間とカネがかかるだろう。これから広がるPlaidのポテンシャルを考えれば、53億ドルでVISAがこれを手に入れることは十分にメリットがあるかもしれない。

Forbesの記事を真似るなら、VISAは次世代決済における新しい水道管を手に入れたことになる。VISAがPlaidのサービスをどのように組み込んでいくか、また、Plaidの顧客層とどう付き合っていくか、明確な戦略はまだ打ち出されていない*4。しかし、Plaidのライバルであり、銀行連合が立ち上げたP2P送金、Zelleに対する大きな牽制を意識しているのは明白であろう。これでVISAは依然として、銀行に対しての交渉優位性を持ち続けることが出来る。

アプリ・サービスのフロント部分に注目が集まりがちだが、金融サービスは幾層もの階層で構成されている。それぞれのレイヤーに新しい技術がもたらされ、これを組み合わせることでDXが成立する。VISAのこの買収はさすがと唸らざるを得ない。この買収がVISA、そしてアメリカの金融界に何をもたらすかはまだ不明だが、創業期に出資先が見つからず、友達の家を転々としていたというPlaidの創業陣には、最高の2020年が到来したのは間違いない。

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