ANA発のスタートアップ、遠隔操作ロボを使った瞬間移動サービス「avatarin」を発表

未来からやってきた猫型ロボットは、瞬時に移動できるドアをポケットから出してくれていた。そんな瞬間移動体験をしてみたいと思ったことがある人は少なくないだろう。
ANAホールディングス株式会社発のスタートアップであるavatarin株式会社は、遠隔地のその場所にいるかのように、見て、聞いて、動き回れる体験を可能にする世界初の瞬間移動サービス「avatarin(アバターイン)」のベータ版を今秋より提供開始すると発表した。
avatarinとは、遠隔操作できるアバターロボット「newme(ニューミー)」を使ったバーチャル移動サービスだ。PCから遠隔地の様々な施設に設置されたロボットにアクセスし、遠隔操作しながら自由に動き回ることができる。マイクとスピーカーを内蔵し、まるでユーザー自身がその場にいるかのように、話したり歩き回ることができる。

 

利用方法は、PCでavatarinの専用サイトから各ミュージアムのアバターにアクセスし、キーボードの十字キーでアバターの操作を行う。首を動かすように、カメラを上下に振ることもできる。ロボット側に障害物センサーが内蔵されており、障害物にぶつかることなく移動可能という。

提供するプランは法人向けの「パブリックプラン」と「プライベートプラン」の2種類。
パブリックプランは体験型商品の販売を目的とし、月額69,800円でnewmeとavatarinのプラットフォーム利用料が含まれる。プラットフォーム上で体験型商品を作成し、内蔵された決済機能を使うことで、幅広いユーザーに対して有償の体験商品を提供できる。プライベートプランは業務利用を目的としたもので、専用アカウントでログインすることにより、会社や組織など限られたメンバー間で自由にnewmeを利用できるという。例えば、自社ショールームで顧客を案内する際に利用したり、エリア管理やフィールド業務などの活用が可能となりそうだ。

出典:avatarin(2021), https://avatarin.com/

水族館や美術館、ファクトリー見学といったミュージアムの鑑賞用途からスタートが予定されており、8月1日より夏休み期間限定アバタートライアルキャンペーンを実施する。当初対応するのは4施設で、鳥取県倉吉市「円形劇場くらよしフィギュアミュージアム」、埼玉県深谷市「渋沢栄一 青天を衝け 深谷大河ドラマ館」、神奈川県箱根町「箱根ガラスの森美術館」、香川県高松市「新屋島水族館」。公式サイトにはcoming soonという形ですでに表示されている。今後は、利用できるミュージアムを順次追加するほか、百貨店や道の駅といったショッピング用途での利用も予定している。

newmeは、avatarinが自社で設計しており、ANA内部ではロボットの開発部隊は持っていなかったものの、ANAが20億円を出資し、最先端のアバターロボット開発を競う「ANA AVATAR XPRIZE」などの活動を通してエンジニアのネットワークを構築。ハードウェアからソフトウェアまで完全自社で設計できる体制を構築したという*1。
試作版のロボットから細かく手を加えており、走行性能や安全性の改善、ステレオカメラの搭載、稼働時間の増加など、ハードウェア面を全面改良したという。その結果、5年程度問題なく使えるハードウェアスペックを謳っており、ヘッドマウントディスプレイを使ったより没入感のある移動体験なども検討している*2。

avatarin代表取締役CEOの深堀昂氏は、同サービスを飛行機など従来の移動を拡張した、意識と存在感を伝送する新しい「モビリティ」と位置づけている。
CNETのインタビュー記事によると、同氏は「エアラインを利用しているのは世界人口のうちたった6%」であると述べ、「体を移動させないと本当に移動できないか。そんなことはない。意識と存在感を伝送することで、別の空間に存在することができる。意識と存在感を伝送する新しい乗り物」と、同社が開発した「モビリティ」を定義している。また、30分だけ海外旅行する、身体的に外出が難しい人でも気軽に移動を楽しめる、などの新しい体験価値の可能性について語っている*3。

avatarinは、ほかにもJAXAと共同で、国際宇宙ステーションの日本棟「きぼう」に設置されたアバターに接続して、宇宙空間に“瞬間移動”できる「space avatar」、匠の技など技術の継承を目的とした「アバター技能伝承」、前述の「ANA AVATAR XPRIZE」、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度」に参加しており、2050年までに身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会の実現を目指すとしている*4。

「あくまでも既存のモビリティに置き換わるものではない」(深堀氏)としつつも、新しい移動の価値を与えることができるとするavatarinがモビリティ、そして観光業界にどのようなインパクトを与えるのか、今秋のベータ版公開が楽しみだ。

 

参考情報:
avatarin(2021), https://avatarin.com/
avatarin(2021), 世界初の瞬間移動サービス「avatarin」ベータ版を今秋より提供開始〜瞬間移動体験を可能にするプラットフォームを立ち上げ、アバター「newme(ニューミー)」を刷新〜 〜2021年7月15日より法人向けご利用プランの予約受付開始〜, retrieved from
https://about.avatarin.com/info-news/news-release/1403/
avatarin(2021),30分あったらアバター旅行しよう。その場にいるかのように、見て、聞いて、動き回れる、次世代の瞬間移動サービス「avatarin」の夏休み期間限定アバタートライアルキャンペーンを実施, retrieved from https://about.avatarin.com/info-news/news-release/1384/

引用情報:
*1 *2 *3 *4
CNET Japan(2021), ANA発、遠隔操作ロボを使った瞬間移動サービス「avatarin」発表--2021年秋に提供へ, retrieved from https://japan.cnet.com/article/35173930/

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