Googleが銀行業務参入、Amazonも準備が本格化か?

2019年11月のWall Street Journal誌によると、Googleはアメリカで銀行業に参入を開始するという。同プロジェクトは、Google社内で”Cache"と呼ばれ、Stanford大学の信用組合(Google社員の多くがここの口座を持っている)が運営を担当する*1。

同社が進出するのはCheck Accountすなわち当座預金であり、小切手決済を好む米国民の多くがこの口座を持っている。同記事を説明するForbesによれば、この当座預金はGoogle Payと接続する予定であるらしい。アメリカでは様々なテックスタートアップがFintechの分野に乗り出しており、Greendotなどのプリペイドカード企業がGobankという普通口座を提供しているが、当座預金への進出はGoogleが初である*2。並び称されるGAFAの中でもAmazonが当座預金サービスの提供を志向しているを言われて久しいが、まだ実現していない。Facebookは仮想通貨Libraでひどく叩かれているが、その夢をまだ捨てていない模様だ。AppleはGoogleのCacheプロジェクトと同じ時期に、Apple Cardをリリースしてクレジット事業に乗り出した。

Amazonの銀行業進出は数年前から様々なアナリストによって予測・指摘されてきたが、現在は暗礁に乗り上げているようだ*3。アメリカのニュースサイトQuartzによれば、AmazonはGoldman Sachsとの提携を進めているというがAmazonはノーコメントを貫いている。まだ、同誌によれば、GoogleはCiti Groupなどとも交渉を進めているという*4。

現在、巨大テック企業による経済の独占への警鐘が世界的に叫ばれはじめ、GAFA包囲網とも言える国際スタンスが出来上がりつつある。欧州のGDPR(一般データ保護規則)もしかり、日本政府もGAFA規制の第一歩とも言える、デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案に重い腰を上げた*5。

現在、GAFAに限らず、Uberなどの巨大スタートアップ、Walmartなどの伝統的リテイラーも金融業進出に積極的である。マレーシアの配車サービスGrabも、今や金融業が本業と言えるほどのサービスである。デジタルの巨人たちは、成長の伸びしろを金融業に求めることで共通している。自社が有する膨大な顧客リストと決済データを使えば、これまでの銀行では出来なかった与信による貸金ビジネスが期待できるし、膨大なマイクロトランザクションが自社の経済圏の中で動き、何らかの手数料を取れるなら爆発的な利益が期待できる。そこで使われるお金のプール先を握ることができれば、巨大な運用利益も期待できる。ユーザーにとっても、送金のスピードや手数料が改善され、オンラインでもオフラインでも自由に使えるバーチャル現金があれば便利であることこの上ない。GAFAの金融進出ははっきり言って遅すぎるくらいである。

一方で、日本は意外と進んでいる。楽天はクレジットカード事業どころか、とっくに銀行も証券も持っている。ソフトバンクもジャパンネット銀行もSBI証券も持っているのだ。GAFAとの大きな違いは、アメリカの法制上、一般企業は銀行を保有できない(ILCと呼ばれる特別目的銀行という名でクレジットカード業などはできる)という点、そして、日本には、バブルによる金融破綻とインターネットの隆盛が同時に訪れた奇跡があり、彼らにはなかったというところだろう。ただ、現在のFintech隆盛に伴い、潮目が変わりつつあるのだ。もともと送金処理が遅く、手数料が高額なアメリカでは、銀行業への市民の不満が高く、Fintechの登場によって即時送金・決済体験を経た消費者は、旧来の金融サービスに満足できなくなっている。さらに、Unbankedと呼ばれる、銀行口座を持たない移民や貧困層への問題意識が拍車をかけ、社会にとってよりよいサービスを提供できるなら、一般企業が銀行を持ったっていいのではないか?という風潮が強くなっている社会背景がある。もちろん、GAFAを中心としたテックジャイアントによる猛烈なロビー活動もあるだろう。

この10年で、貨幣の電子化と金融の国際流通の即時化は格段に進み、同時に金融における国家の役割が改めて見直される時期に来ている。アメリカの経済は今やGAFA抜きでは語れず、アメリカおよび他国の国家金融システムさえ支配するかもしれない、そして、そのGAFAが邪悪かもしれない、という懸念も大きく存在しているのが事実だ。その懸念が生み出した負の力をもろに食らったのがFacebookの仮想通貨事業進出―――Libraと言えるかもしれない。

ともあれ、GoogleとAmazonが銀行業を持ったとき、アメリカはどう変わり、世界はどう変わるのだろうか。

*1 WSJ(2019), Next in Google’s Quest for Consumer Dominance: Banking, retrieved from
https://www.wsj.com/articles/next-in-googles-quest-for-consumer-dominancebanking-11573644601

*2 Forbes(2019), グーグルが「銀行業務」参入、当座預金でアマゾンと激突へ, retrieved from
https://forbesjapan.com/articles/detail/30711

*3 WSJ(2019), An Amazon Checking Account Could Displace $100 Billion In Bank Deposits (But It Won’t), retrieved from
https://www.forbes.com/sites/ronshevlin/2019/01/21/an-amazon-checking-account-could-dis
place-250-billion-in-bank-deposits-but-it-wont/#17435bfb254a


*4 QZ.com(2020), Goldman Sachs and Amazon may soon be in the banking business, retrieved from
https://qz.com/1796096/goldman-sachs-is-becoming-an-ally-for-tech-firms-like-amazon/

*5 公正取引委員会(2019), デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会, retriebed from
https://www.jftc.go.jp/soshiki/kyotsukoukai/kenkyukai/platform/index.html

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