20200414

今、インドにおけるリテールの動きが熱い。もう少し正確に言えば、アメリカのリテールビッグ2が積極的にインドへの投資を敢行している。

Walmartは2018年にインド最大手のEC、Flipkartを買収し、同じくインド進出を目論むAmazonへの対抗を明らかにしていた。同社は2006年にインド財閥のTata Group傘下であるBhartiと組んで店舗進出を果たしていたが2013年に契約を解消し、単独経営化を進めていた(インドの法制が100%外資の国内展開を認めたため)が、店舗拡張に苦しんでいた。その理由の一つは、「インド社会に深くはびこる贈収賄の問題であり、インド政府が新たに規定した汚職防止法と、本国アメリカのそれに対応する労力が甚大だったことである」とインドのメディア、India Timesは報じている。そんな中に進められたのが、インド国内全28店舗のWalmart Storeのうち6店舗をFLipkartのフルフィルメントセンター、すなわちeコマース用の配送センターに改装することである*1。

実際、同誌によればWalmart Indiaは2019年度に409.5億ルピー(約584.7億円)の売上を計上していたが17.1億ルピー(約24.4億円)の損失も計上。通算の累積損失は218億ルピー(約311億円)に膨らんでいる。

Walmart in India by Amit Agarwal on Flickr

彼らの行動から読み取れるのは、インド市場におけるeコマースの隆盛と、店舗ビジネスの苦戦である。上記の通り、28店舗で580億円にも登る売上が見込めるのだから、インドの消費そのものは大きな可能性がある。一方、利益効率を考えれば、eコマース最大手であるFlipkartに経営資源を集中することが得策と判断したのだろう。現在Walmartは本国でオンラインとオフラインをまたぐ広告と消費データ取得への投資およびサービス展開を進めており、これがインドにも導入されればコモディティブランドのグローバル広告投資という財源をつかめるかもしれない。

これと並行して、もう一つの巨人、Amazonはこの3月、同社の音声認識ソフトAlexaをベースとした「音声コマース」のロールアウトを発表した*2。同記事によると、Amazonはインドなまりの英語にも対応しているという。このAlexaによる音声コマースは米国外市場では初の展開となる。同じ英語圏であるイギリスやオーストラリアよりも訛りのきついインドを選んだ理由は、その市場ポテンシャルにほかならない。そして、インド国民はほとんど英語をしゃべることができるが、英語の読み書きを苦手とする人も多い。この店、「Alexaコマース」のインド進出はつぶさな市場調査に基づいた慧眼と言えるかもしれない。

そのAmazonも、インドを含めた海外進出は総じて赤字である。Forbesの記事によれば、2017年の段階で海外進出による損失は30億ドル(約3300億円)に至る。また、AmazonもかつてFlipkart買収に動いており、事実上Walmartとの買収合戦に負けた形である。これによって、Amazonはインドで自由を謳歌することは出来ず、本国と同じようにWalmartの壁と戦わざるを得ない羽目になっているのだ*3。

ともあれ、これだけの損失を被っていても、この両巨人はインド市場への情熱を燃やし続けている。2017年でほぼ中国に総人口が並び、2020年には中国を超えると言われるこの国は、アメリカ生まれの巨人が戦う主戦場と化し始めている。そして、この市場は世界のDXを牽引するエンジニアの帝国でもあるのだ。


*1 India Times(2020), Walmart to turn some stores into Flipkart warehouses, retrieved from  https://economictimes.indiatimes.com/industry/services/retail/walmart-to-turn-some-stores-into-flipkart-warehouses/articleshow/74310432.cms

*2 Terchcrunch(2020), Amazon rolls out Alexa-powered voice shopping experience in India, retrieved from
https://techcrunch.com/2020/03/12/amazon-rolls-out-alexa-powered-voice-shopping-experience-in-india/

*3 Forbes(2018), ウォルマート、インド進出本格化でソフトバンクが得る利益, retrieved from
 https://forbesjapan.com/articles/detail/20981/2/1/1

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう