中国のスタバ、luckin coffeeがスマート自販機戦略を本格展開
世界にはスタバがあるが、中国にはluckin coffeeがある。
以前、中国人留学生が冗談交じりにこう話していたのを思い出すが、少なくとも中国国内では真実味を帯びる言葉かもしれない。
luckin coffee(瑞幸珈琲)は、2018年に一号店を出したばかりのまだまだ駆け出しのコーヒーショップである。しかし、同年に店舗数2000を突破し、現在は4,507店舗にまで到達。2019年5月には米国NASDAQ上場を果たし、創業わずか18ヶ月という史上最速上場を果たしている。そのLuckin Coffeeが新年早々、新型の自動販売機による無人小売戦略を発表した。中国の調査会社Equal Oceanによれば、同社は「luckin coffee EXPRESS」という無人コーヒーマシンと「luckin pop MINI」というスマート自動販売機の2タイプを発表したという。*1
実際、中国でのコーヒー消費はそれほど一般的ではなかった。この市場を開発したのは間違いなくスターバックスである。Business Insiderなどによると、スターバックスの中国国内店舗は約3,600店舗。費やした時間は20年である。luckin coffeeは、創業2年でスターバックスの店舗数を抜いた。
luckin coffeeの提供スタイルはデジタル技術を大前提としたものである。顧客はアプリでコーヒーを注文し、店舗で受け取るか配送してもらう。アプリをダウンロードすれば1杯無料になり、友達を紹介すればその数だけ無料になる。まさにUberなどが行ったようなディスカウント・プロモーションでユーザー数を伸ばした。一方、自転車シェアのofoが同様のプロモーションを行ったこと(現在破産が噂されている)、そしてluckin coffeeの資金調達計画が流出し、140億円の赤字を抱えていることも明らかになったため、同社のあまりに出来すぎた躍進を冷ややかに見る目も存在する*2。
実際、同社の資金をバックアップしているのはウォール街で名を馳せたプライベート・エクイティ・ファンド、CENTURIUM CAPITAL(大鉦資本)と、エンジェル投資家のCharles Lu(陸正耀)である。したたかな資金調達と回収戦略が用意され、これを着実に実行しているのがlucking coffeeであるといっていい*3。
同社が提供するluckin coffee EXPRESSは、自動コーヒーマシンである。消費者はスマホで注文・決済他、商品を端末にかざすことによって、コーヒーを手に入れることができる。基本的に、店舗でスタッフが入れるコーヒーと品質の遜色はない。同じ豆、同じブレンド、同じ抽出条件で高品質の一杯が約90秒で手に入る。luckin pop MINIは海外でよく見られるガラス張りの自動販売機である。コーヒーだけではなく、スナック類もスマホで買うことが出来る。すなわち、この2台が配置されれば、luckin coffeeが提供するサービスは実現できるということになる。
最初からデジタル注文と決済を用いることによって、決済レジというオペレーションコストを最小化し、レジ待ちというスターバックスが常に直面してきた課題を最初から除外し、かつすべての注文・決済・配給のビッグデータをリアルタイムに解析することで、全店舗レベルでのサービス設計やサプライチェーンの最適化を可能にする。luckin coffeeはこうして低価格化や無料クーポンの原資捻出を可能にしているという。実際、中国のスターバックスでカフェラテを頼めば約30元(約500円)だが、luckin coffeeは約20元(約320円)で済む(*2同Business Insider記事による)。そして、何よりも、彼らはテクノロジー企業としての背景を前提としたコーヒーチェーンの経営にチャレンジしている。彼らは小売飲食業における食品配給と調達プロセスに大きな変革をもたらそうとしている。ただし、顧客がその価値をどこまで享受しつづけるかは、まだわからない。
引用情報:
*1
Equal Ocean(2020), Luckin Edges Closer to Customers with Vending Machine Strategy, retrieved from
https://equalocean.com/retail/20200108-luckin-edges-closer-to-customers-with-vending-machine-strategy
*2
Business Insider(2020), 2019年にスタバ抜くと豪語した中国luckin coffee。「コーヒー業界のofo」説も浮上, retrieved from
https://www.businessinsider.jp/post-182890
*3
36Kr(2020), 史上最速でナスダック上場!Luckin Coffeeが描く勝利のシナリオ 【36Kr独自取材】, retrieved from
https://36kr.jp/23173/参考情報:
Luckin coffee
https://www.luckincoffee.com/
Wikipedia(2019), Luckin Coffee, retrieved from
https://en.wikipedia.org/wiki/Luckin_Coffee
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