サブスクリプション管理に特化したKiZUKAI

昨今、様々なサブスクリプション・サービスが生まれている。シェアリングエコノミーへの注目と可能性が消費スタイルのトレンドを変え始めており、サブスク型サービスを軸としたスタートアップだけでなく、伝統的企業の挑戦も目立つようになってきている。

サブスクリプションを考える上で重要な指標となるのはLTV(Life Time Value)と解約率である。LTVは直訳すれば顧客生涯価値であり、「一生のうちにブランドに顧客が支払い続ける対価の総量」という概念で、単発の顧客単価よりも、1年間もしくは複数年における長期の累積売上によってその顧客の重要度を評価する考え方であり、既存顧客からの売上を最大化するリテンション・マーケティングの考え方の主軸である。この視点でのLTVの捉え方は「一人あたりの年間購買単価」とほぼ同義なので、LTVは、年間購買単価の高い顧客をつなぎとめ、低い顧客にいかに買わせるか、というターゲットの評価指標として用いられることになる。このため、マーケティング担当者は各顧客のLTVを把握して、そのレベルごとに様々な施策をうち、成果獲得を効率化していくことになる。

一方で、サブスクリプション・モデルの場合、このLTVをどう考えればよいだろう?サブスクは基本的に定額なので、年間LTVには上限がある。月額1000円のサービスならば、一人当たりの年間LTVは1万2000円が限界である。もちろん、アップグレードの推奨によって単価を上げることも可能だがそれでも上限が固定される。つまり、20%の常客のLTV拡大によって全体のLTVを引き上げるような、いわゆるパレートの法則がサブスクには通用しない。サービス全体のLTVを上げるためには有料会員の解約阻止が鍵となる。

KiZUKAI*1は、サブスクリプション・サービスの重要指標であるLTVと解約率を測定するSaaSを提供する企業。2016年にモンリッチという名称で創業し、当初はカスタマーフィードバック、つまり、顧客の声を集め、分析して、顧客満足度向上の支援を行っていた。ここから得られたノウハウが、AIを用いたLTVおよび解約探知の技術に繋がり、2019年のLTV自動分析ツールKiZUKAIの発表とともに、社名もKiZUKAIに変更した。2020年には、アーリーステージ投資専門のVC、STTIVEなどから8000万円の調達に成功している*2。

そのKiZUKAIが2020年度の「toCサブスクリプションサービスのカオスマップ 2021年版」を発表。Techcrunchでは、同カオスマップでは、『動画などのデジタルコンテンツ』と、教育などの『サービス・健康・教育』、家具・家電の『物品・レンタル』の3つを大枠カテゴリーと設定。2021年版の特徴は、特にコロナウイルスの影響が大きく、在宅の時間が増えている中で、それに適するサービスが拡大しているという」と報道している*3。

サブスクという言葉が氾濫し、旧指標のままで運営している企業は多いはずである。また、本来LTVとは単なる累積顧客単価だけではなく、継続率はもちろん、アクティブ率やレビュー投稿、シェアなどのブランド貢献を含んだ、SNS時代にマッチした評価も重要になってくる。そして、会員がブランドにとってありがたい行動を取る背景には、顧客満足度の高さが大きく影響してくる。
こういった様々なパラメータを解析して優良顧客をつなぎとめることは、サブスク運営に極めて重要なものとなっていくのは間違いなく、自社で測定・予測分析を行うにはかなりのノウハウと労力が必要になる。サブスクビジネスが伸びていくに連れ、KiZUKAIへの期待は高まって行くことになるだろう。

画像:KiZUKAI ホームページより
https://corp.kizukai.com/press_release/post-894/

 

引用記事:
*1
Techcrunch(2021), KiZUKAIがサブスク事業者向けLTV・解約率改善ツール正式版をリリース , retrieved from https://jp.techcrunch.com/2021/02/08/kizukai-releases-kizukai-official-version/, 2021.03.10

*2
PRTIMES(2020), サブスク向けLTV/解約率 改善ツール『 KiZUKAI 』 STRIVEとReality Acceleratorから総額8,000万円の資金調達, retrieved from
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000055421.html, 2021.03.10

*3
Techcrunch(2020), KiZUKAIが「toCサブスクリプションサービスのカオスマップ」2021年版を公開, retrieved from https://jp.techcrunch.com/2021/01/12/kizukai-to-c-subscription-chaos-map-2021/, 2021.03.10

参考情報:
KiZUKAI
https://corp.kizukai.com/, 2021.03.10

※編集部注:TechCrunch Japanの引用記事は、引用当時に存在していたURLを掲載しています。同サイトは2022年5月1日にて閉鎖となるため、リンク先記事が消失している可能性があります。

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