生活拠点の自由を開放する多拠点居住「ADDress」は、地方のDXを後押しするか
全国住み放題の多拠点居住プラットフォームの「ADDress」が、10月29日にサービスを正式リリースし、同時に資金調達を発表した。
ADDressは、月額4万円のサブスクリプションで日本各地の空き家や貸し別荘を利用できるサービス。夫婦などの複数人で利用したい場合は、月額2万円をオプションで支払う。
現在展開している「ADDresの家」は全国24箇所で、一軒家の個室を確保し、キッチンやトイレなどは共有スペースとして利用できる。もちろん、寝具からアメニティまで充実しており、Wifiも無料で使える。言うならば、他拠点型シェアハウスであり、アポイントのある時は都心部、普段はいろんなところを移り住んで田舎暮らしをするようなライフスタイルが可能になる。
出資に参加した企業にはJR東日本スタートアップがあり、ANAとの提携も同時に発表されている。両者は、ADDressとの協業により、交通料金の定額化「交通サブスク」の提供を担う予定となる。
また、同社がこの2月に発表したリリースによると、宿泊施設のアメニティはLEAF&BOTANICS社、寝具はコアラマットレス社、家具提供はVUILD社などとの提携を行いつつ、ロケーション確保に滋賀県大津市などの地方自治体や不動産ビジネス、各種シェアサービスなどと提携していくという。
同社サービスのユニークな点は「家守(やもり)」と呼ばれる管理人を同時に募集している点であろう。月額の報酬は4万円程度と少ないが、他に収入源を持つ人が、利用者のアテンドや家の保全を副業として、住み込み滞在することが可能だ。Airbnbは物件提供側が自力でホストを雇うか、自らがホストとして動かなければならないが、ADDressの場合はADDresが家守のリソースを調達していくことになる。この点、空き家や使われなくなった企業保有の保養所有効活用が、比較的容易に展開できるだろう。
デジタルによって宿泊予約も交通の予約も簡単かつ即時で実現できる時代だが、地方に行くほどデジタルからアクセスできないサービスが多いのが現実であり、休眠物件も地方の方が圧倒的に多い。あとは交通手段の確保だが、JR東日本とANAがその答えを握ることになる。
これまで、貸し別荘サービスは存在していたが、個人レベルのものも多く、探すのも大変なら料金もまちまち、予約は電話、夏休み等の繁忙期にはほとんど予約が取れないなど、ちぐはぐな面が目立っていた。会員制リゾート施設は富裕層や企業の福利厚生であり、一般人には手が出ない。何より、ほぼすべてがレジャーに向けた活用提案であり、多くの物件でwifiも存在しない。結果的に閑散期の問題は解決していない。
ADDressはこれらの問題をデジタルを使って解決しようとしている。遊休資産を自ら開拓し、使える状態にする人的サービスを提供し、デジタルにアクセスさせることでデータベースが出来る。観光よりも、ロケーションフリーで働ける人たちにターゲットを定め、移動しながら働く遊牧民スタイル=ノマドの行動スケールを拡大することで、地方への人の動きを作ることができる。そしてそのノマドの大半はデジタルワーカーであり、デジタルを使い倒すのはお手の物である。
惜しむべきは、最長連続滞在が7日間という点であろうが、これも物件が増えていけば改善されるかもしれない。
有休不動産を収益源に変えるという点ではAirbnbと同じだが、彼らが主にレジャーや出張などの特定イベント利用をターゲットとしている一方で、ADDressは日常生活拠点としての活用ニーズを提供する。居住という提供価値の概念をデジタルで変える試みになるかもしれない。
参考記事:
PRTIMES (2019), 株式会社アドレス プレスリリース, 定額で全国住み放題の多拠点コリビング(co-living)サービス「ADDress」が戦略発表。第一弾は11拠点。会員募集クラウドファンディングも開始!, retrieved from
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000040352.html
日系XTREND(2019), ANAやJR東日本と連携 多拠点生活×交通サブスク実現へ, retrieved from https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00051/00016/
TechCrunch(2019), 多拠点居住プラットフォーム「ADDress」正式ローンチ、MaaSとの定額組み合わせサービス提供も, retrieved from
https://jp.techcrunch.com/2019/10/29/address-released-officially/ ,※編集部注:TechCrunch Japanの引用記事は、引用当時に存在していたURLを掲載しています。同サイトは2022年5月1日にて閉鎖となるため、リンク先記事が消失している可能性があります。