Walmart、2時間配送のExpress強化 ーーー Amazon Prime Nowに正面から対抗

2020年3月2日、Walmartは生鮮・日用品の即日配送「Walmart Express Delivery」の最低注文要件であった35ドルを撤廃すると発表した。これにより、ユーザーは少ない注文でも、一律10ドルの特急料金で2時間以内の配送をオーダーすることができる(ただし、アイテム数の上限は65個に設定されている)*1。
Walmartの同リリースによれば、全国5000を超えるWalmart店舗のうち3000店舗が対応するとしている。
また、Express以外の通常配送は従来どおり、35ドルの最低注文料金が前提となる模様。

ちなみに、Walmartの日用品配送サービスをまとめるとこうなる。

原則として配送やピックアップには35ドル以上の注文が必要
カーブサイドピックアップ(店員が店舗前の路肩まで持ってきてくれる)は無料
配送料金は7.95~9.95ドル/1回(通常料金)
Walmart+に入っていれば通常料金は無料(年会費98ドルまたは月額12.95ドル)
Express料金は通常料金に10ドル加算となる(最低注文要件は無し)

 

アメリカにおける生鮮・日用品配達、すなわちフレッシュ・デリバリーは、Instacartなどの買い物代行会社とAmazonFreshによってけん引されてきた。買い物代行会社はショッパーと呼ばれるスタッフがユーザーの代わりに店舗に向かい、所定の買い物をして送り届け、手数料をもらうモデルであり、デリバリー業者2番手に成長したDoorDashもこの領域(特にコンビニなどの買い物代行)で売上を伸ばしているのだが、Walmartのような大規模店の場合、所定の商品を探してレジで決済するだけでかなりの時間を必要とし、とても2時間では配送完了できない。
このため、Walmartはパーソナル・ショッパーと呼ばれるパートタイムのWalmart内専用買い物代行要員を17万人雇用して買い物と梱包を行い、配送部分のみをDoorDashなどのデリバリー会社に委託する。いわば、レストランとフードデリバリーの関係性と同じ状況をつくることで、Amazonが持つ自前のラストワンマイル配送力に対抗している。
また、Techcrunchが報道しているように、Walmartは一部の小規模店舗を配送用の倉庫に改造し、Alert Innovation、Dematic、Fabricといったロボティック・オートメーション企業と協業し、自動管理型のフルフィルメントセンター配備を強化している*2。

これまで、Amazonの専売特許と言えたさまざまなラストワンマイルのロジスティクス技術が、スタートアップの出現によって、普通の会社でも実現できるようになってきている。いわゆるAmazon-likeと呼ばれるこれらのサービス群をWalmartは積極的に活用し、他社の伝統的リテールもこれを追随している。

 

引用情報:
*1
Walmart(2021), Walmart Drops $35 Minimum for Express Delivery, retrieved from
https://corporate.walmart.com/newsroom/2021/03/01/walmart-drops-35-minimum-for-express-delivery
*2
Techcrunch(2021), Walmart drops the $35 order minimum on its 2-hour ‘Express’ delivery service, retrieved from
https://techcrunch.com/2021/03/01/walmart-drops-the-35-order-minimum-on-its-2-hour-express-delivery-service/

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