インドネシアの新たなシェアリングエコノミーサービス―――個人宅の台所をクラウドキッチンにするDishServe

クラウドキッチンという言葉をご存じだろうか。店舗を構えず、作られた料理は主にデリバリーで提供される。クラウドサービスに似ていることから「クラウドキッチン」と呼ばれている。日本では最近、一つの店(キッチン)がインターネット上で多数の「専門店」を名乗っているケースもあり、専門家は「専門店の料理が届くと信じた客を欺くことになる」と警鐘を鳴らしている*1。

インドネシアのDishServe(ディッシュサーブ)は、個人宅の台所であるホームキッチンをクラウドキッチンにするサービスを展開している。自社施設を借りたり、購入したりする代わりにホームキッチンと提携し、コロナ禍でオンライン注文が増えた食品・飲料ブランドと繋げている。
2020年9月に設立したDishServeだが、着々と事業を拡大しており、現在すでにジャカルタで約100軒のホームキッチンと協業している。彼らは中小の食品・飲料ブランドのラストワンマイル配達ネットワークになることに注力しており、金額非公開のプレシード資金をInsignia Ventures Partnersから調達した。

 

 

出典:DishServe https://dishserve.com/

 

DishServeは独特な方法でホームキッチン登録の選考を行っている。まず自宅キッチンの写真を送ってもらい、次にスタッフが実際に訪れてキッチンをチェックし、申込者をふるいにかける。そして問題がなければ、ネットワーク内の他のホームキッチンと同じ機器や機能性をもたせるべく申込者のキッチンをアップグレードする。アップグレードにかかる費用は同社が負担する。アップグレードの所要時間は通常3時間で、費用は500ドル(約5万5000円)。機器の所有権は同社が持ち、ホームキッチン運営者がDishServeをやめることになれば機器を回収する。

ここで重要なポイントはDishServeのホームキッチン運営者は実際には調理しないということだ。食材は食品・飲料ブランドによってパッケージ化されたものが用意され、運営者は手順に従って食事を温めてまとめ、包装して、ピックアップに訪れる配達業者に渡すのが主な仕事である。

 

 

「食品ブランドは初期費用を払う必要はありません。また(このことは、ブランドが)商品を配達提供するより安価な方法でもあります。というのもブランドは電気代や配管作業費などを払う必要がないからです。そして業務を請け負う代理店(ホームキッチン運営者)にとっては家にいながら稼ぐチャンスとなります」
創業者のシンギ氏はTechcrunchのインタビューでこのように述べた。

DishServeは少なくとも2021年末までは他都市に事業を拡大せず、ジャカルタでのネットワーク成長に注力する計画だという。懸念点と思われた衛生面も、オンラインでの監査を頻繁に行い衛生基準が保たれるようになっている。なにより、ビジネスとはほど遠い存在だと思われた個人宅のキッチンの有効活用ができる点で画期的なサービスと言えるだろう。

 

参考情報:
DishServe(2021), https://dishserve.com/

crunchbase(2021), https://www.crunchbase.com/organization/dishserve

Techcrunch(2021), By working with home entrepreneurs, Jakarta-based DishServe is creating an even more asset-light version of cloud kitchens, retrieved from https://techcrunch.com/2021/05/30/by-working-with-home-entrepreneurs-jakarta-based-dishserve-is-creating-an-even-more-asset-light-version-of-cloud-kitchens/

引用情報:
*1
JIJI.COM(2021), その店、本当に専門店? 幽霊レストラン、コロナで拡大―「実態と乖離も」識者警鐘, retrieved from https://www.jiji.com/jc/article?k=2021052900331

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