チーズティがコロナ後のカフェ需要を変えるか ― HEY TEAの挑戦

現在、中国の若者の間で流行となっているのが「芝士茶」である。芝士はチーズを意味し、要はチーズのお茶である。伝統的中国茶にチーズをふりかけたもので、2010年頃に台湾の屋台で提供されはじめ、シンガポールや香港などで人気となり、程なく中国本土でブレイクした。その中心的なブランドが、HEY TEA(喜茶)である。

そのHEYTEAは3月23日に160億元(約2438億円)の巨額調達を完了。リードインベスターは中華系のHillhouse Financial Group(高瓴资本)とニューヨークのCoatue Managementによるという*1。ちなみにCoatue Managementは、UberやSnapChat、ファイル共有のBox、 そして現在のWalmartのデジタルEC基盤ともいえるJet.ocmに出資していた名門VCである。

筆者は5~6年前、台北の夜市でチーズティーを頼んだことがある。冷たいジャスミンティーに粉チーズを掛けただけのものだったが、3年前、ニューヨークで見たときはホイップしたチーズクリームが載っていて、見た目はまるでビールのようであった。このホイップクリームを載せた元祖が、どうやらHEY TEAであるという。また、チーズティーは基本的にバブルティー(タピオカ茶の英訳はこうなる)の別バリエーションとして売られていたが、これを専門店化したのもまた、HEY TEAである。

HEY TEAの流行はその味よりもインスタ映えが大きく影響しているだろう。2012年創業の同社は現在、中国国内に390店舗を構え、2020年内に倍増させる計画であるという。特筆すべきはHEYTEA GO(喜茶GO)、つまり無人店舗の存在である。スターバックスはもちろん、以前紹介した中華版スタバのLuckin Coffeeもそうであるように、テイクアウトを主力とするカフェビジネス最大のボトルネックは行列である。HEY TEAは2019年の秋から無人店舗の導入を開始。平均2時間といわれた強烈な待ち行列は大幅に削減され、今では82%の顧客がアプリ決済経由でのテイクアウトを利用しているという*2。

アジア系ビジネス情報の36Kr Japanの記事によれば、2019年1月の時点で「喜茶GO」のユーザー数は600万人を超えている*3。また、Equal Oceanによれば2019年中に少なくとも約2200万人の「喜茶GO」ユーザーが存在することになる。

 

動画:bilibili.com https://www.bilibili.com/s/video/BV1g7411Y74x

 

「喜茶GO」のユニークなところは、スターバックスの事前オーダーとAmazon Lockerのピックアップを組み合わせた点にあるだろう。ユーザーは店舗に並ぶことなく、自分の注文商品をロッカーから受け取ることができる。

 

コロナ禍蔓延後のこのタイミングでリテール企業への巨大投資が行われることにはいささか疑問符も残るが、アフターコロナに予想される消費形態の変化、すなわち非接触や非密集というキーワードに、HEY TEAは一つの方向性を見出している。ちなみに同社は近年日本上陸が噂され、Twitterアカウントも開設されているが*4、現段階では詳細不明である。インスタ映えでタピオカブームを牽引したThe Alley(鹿角港)を超える事ができるだろうか。

 

引用情報:
*1,2
EqualOcean(2020), HeyTea to Close New Financing at a Valuation of CNY 16 Billion, retrieved from
https://equalocean.com/retail/20200323-heytea-to-close-new-financing-at-a-valuation-of-cny-16-billion

*3
36Kr Japan(2020), 超人気ドリンク専門店の「喜茶 HEYTEA」 無人化で大行列を解消, retrieved from https://36kr.jp/24837/

参考情報:
*4
Twitter — HEYTEA Japan, https://twitter.com/heyteajapan

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