医療スタートアップのRani「飲む注射」Robotic Pillを開発
誰にとっても注射とは嫌なものである。何故なら、痛い。何が楽しくて自分の皮膚に針を付き立て、あまつさえ薬という名の異物を注入しなければならないのか。それは全て、我が身の健康という対価を得るための、文字通りペインである。
Rani Therapeuticsは2012年に設立された医療スタートアップであり、経口摂取、すなわち口から摂取する医薬品の研究開発に特化している。創業者のMir Imranはインド系アメリカ人で、ラトガース大学で電気工学、生物工学を修めたダブルメジャーを持ち、InCube Labsという医療技術専門の研究開発企業を1995年に立ち上げて26年以上も代表を努めている、医療テクノロジー界の重鎮の一人であり、世界初の埋込み型除細動器を開発した人物でもある。
彼がこの度、Raniを通じて提供するのはRobotic Pillと呼ばれるものである。大きめのカプセル剤のようなものを口から摂取すると、そのカプセルは胃や小腸など適切な場所で薬剤を注射し、即効性かつ有効性の高い投薬治療を可能にするというもの。もともと皮下注射は患部に直接作用するものではないので効果的とは言えないし、痛みを伴う。Imran氏はこの問題を同時に解決するためにこの「飲む注射」の開発に取り組み、8年かけて実用化が見えたという。
メカニズムは、こうである。微細な注射機能をもつカプセルを経口摂取。カプセルは胃酸で溶けず小腸に移動してから溶ける様になっている。カプセルが溶解する時に生まれる二酸化炭素の圧力で注射器が小腸の内壁に薬剤を注入。その後排泄される。注射器は埋込み型医療機器などに使われるポリマー製で、仮に排泄されずに残ったとしても金属アレルギーの危険性はない。小腸に痛覚はないので無痛。そして、小腸内壁から吸収された成分はあっという間に血液に吸収され、効果を発揮するという。
糖尿病や骨粗鬆症などの代替治療法として、また、皮下注射に激烈な痛みを伴う先端巨大症などの治療に効果が期待されている。同社は2020年のラウンドで新たに6900万ドル(約76億円)を調達し、通算の調達資金は2億ドル(約238億円)を超えている。
参考情報:
Techcrunch(2019), How Rani Therapeutics’ robotic pill could change subcutaneous injection treatment, retrieved from
https://techcrunch.com/2021/03/05/how-rani-therapeutics-robotic-pill-could-change-subcutaneous-injection-treament/
Rani Therapeutcs
www.crunchbase.com
Techstartups(2020), Unicorn startup companies 2020: List of top 500 unicorn startups with valuation of $1 Billion+, retrieved from
https://techstartups.com/2020/11/19/unicorn-startup-companies-2020-list-top-500-unicorn-startups-valuation-1-billion/