ホテルの運営をDX―――遠隔コミュニケーションサービスと電力モニタリング・遠隔コントロールシステムを活用した実証実験をパナソニックが実施

パナソニック株式会社は、株式会社SQUEEZEと共同で、接客を伴う業務の最適化を促進する遠隔コミュニケーションシステム「AttendStation™(アテンドステーション)」と、電力モニタリングと遠隔コントロールシステム「AiSEG2(アイセグツー)」を用いた共同実証実験を開始した。場所は東京都大田区にあるSQUEEZEが運営する次世代型スマートホテル「Minn 蒲田」だ。大別すると、前者のAttendStation™ はアバターを活用した非接触型接客システム、後者のAiSEG2はIoTによる遠隔制御を可能とした居住施設のエネルギーマネジメントシステムで、いずれもパナソニックが開発した技術である。

株式会社SQUEEZEは2014年9月に設立した会社で、従来の大幅な固定費(人件費)がかかるホテル経営の仕組みを変え、オペレーション業務を機能別に切り崩して提供することにより、損益分岐点が低く柔軟性のある、新しいホテル経営の在り方を提唱している。同社はクラウド宿泊運営システムsuitebookなどを各種宿泊施設に提供しつつ、自ら「Minn」のブランド名で次世代スマートホテルを全国5 カ所で運営・展開している。今回の実証実験は、SQUEEZEが運営する次世代型ホテルマネジメント環境の中に、パナソニックの最新技術を取り入れた形で行われる。

「Minn 蒲田」は2021年6月よりクラウドコンシェルジュが滞在をサポートする非対面ホテルとなっており、今回の実証実験で、彼らは非接触・非対面・省人化運営と高品質な接客の両立によるホテル経営のデジタルトランスフォーメーション実現を目指す。

 

今回導入された遠隔コミュニケーションシステム「AttendStation™」は、フロントコンシェルジュがディスプレイ上のアバターを介し、ゲストの問い合わせ対応などの接遇を実施する。アバターは操作しているフロントコンシェルジュの顔の動きと声に連動し、状況に応じてお辞儀をするなど、しぐさを選択することもできる。そのため、非接触・非対面ながらも表情豊かで対面に近い案内が可能だ。また、あらかじめ用意している補足説明資料やWEBサイトを対話内容に合わせてスタッフが表示することもできる。軽微な応対などはそのまま遠隔で対応し、状況により直接お客様の元へ駆けつけたり、バックヤードで業務にあたりながら着信するたびに対応することが可能で、業務効率化へもつながる。今回の実証実験ではゲストの満足度を損ねることなく、フロント人員の人件費約75%削減を目指すという。「AttendStation™」のサービスページではQRコードを読み込むことで実際にアバターが喋っている姿が見られる。筆者も実際に試してみたが、最初は違和感があるものの、口や体の動きや身振りが思ったよりも滑らかで、慣れれば実際の接客に近く感じられる印象を受けた。

 

 

出典:Panasonic(2021),遠隔コミュニケーションサービスと電力モニタリング・遠隔コントロールシステムを活用したホテル経営DXの実証実験を住空間型次世代ホテル「Minn 蒲田」にて開始, retrieved from https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/06/jn210609-1/jn210609-1.html

 

もう一方の「AiSEG2」は、IoTやAIなど最先端の技術と、配線器具や開閉センサーなどの技術を融合した「HOME IoT」の中核機器であり、電力モニタリングと遠隔コントロールを行う。これまで一般的だった棟全体での水光熱費の管理は、今回の実証実験では、パナソニックが住宅分野でノウハウを積み上げてきた「AiSEG2」を用いて、居住空間と同様のソリューションをホテル空間へ活用することで部屋ごとの電気代を緻密に把握し、部屋ごとの採算の見える化による原価管理を推進する。また「AiSEG2」をSQUEEZEの無人チェックインシステムと連携させることで、ゲストのチェックイン・アウトに連動して、空調・照明のスイッチをオン・オフさせ、部屋ごとの電気代約10%削減を目指す。将来的にはチェックアウトのタイミングの把握や、電力使用データによる滞在状態、電気機器の使用有無を確認し、水光熱費の低減や適切な清掃の最適リソース配分を行うなど、さらなるコスト削減にも取り組む予定だ。

コロナ禍も相まって非接触・非対面での接客は非常に需要が増えている。コストカットの具体的な数字を掲げて進むパナソニックの挑戦を引き続き注目していきたい。

参考情報:
株式会社SQUEEZE(2021), https://squeeze-inc.co.jp/

Panasonic(2021),遠隔コミュニケーションサービスと電力モニタリング・遠隔コントロールシステムを活用したホテル経営DXの実証実験を住空間型次世代ホテル「Minn 蒲田」にて開始, retrieved from https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/06/jn210609-1/jn210609-1.html

Panasonic AiSEG2(2021), https://www2.panasonic.biz/ls/densetsu/aiseg/

Panasonic AttendStation(2021), https://panasonic.co.jp/cns/psd/ATTENDSTATION/

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