建設のAmazon, CostCertifiedが提供する高速見積もり
「建築のAmazon」を目指し、CostCertifiedは845万ドルのシードラウンド調達を発表した。CostCertifiedはカナダのカルガリーに本拠を置く企業。共同創業者のMike Bignoldは、ブリティッシュコトンビア大学を卒業後、住宅のリノベーションを主業とする工務店を経営していたが、建築プロジェクトの非効率や工期の遅れの原因として、コスト試算、すなわち、各資材の指定、変更、見積もり、調達、そして、何より、建築現場の人間がテクノロジーに慣れていないところに大きな問題があると認識した。彼は自らプログラムを書いてプロジェクトコストを見積もる「見積もりエンジン」を開発し、他の建築請負業者への提供販売を開始。2017年にこのビジネスに絞ることに決め、工務店機能を売却。SEOに強いWeb開発会社を経営していたDavid Vassを共同創業者に招聘し、このアプリに知名度をGoogleの検索トップに引き上げて、この工務店向け「見積もりエンジン」ビジネスを巡航させていった*1。
 
彼らはその後も研究開発を続け、機能を充実させていったが、転換の契機となったのはコロナ禍である。ただでさえテクノロジーに疎い建築業界、そして外出禁止令、非接触の問題、そして住宅需要の急増である。CostCertifiedはこの背景の中、プロ向けの見積もりエンジンから、施工主とコミュニケーションしながらリアルタイム見積もりができ、かつ下請け業者へのオファーとマッチングを行うSaaS型のB2Bサービスに転換する。そして、2021年、有名アクセラレータのY Combinatorへの参加・卒業に伴い、同卒業生にして建築DXの雄、PlanGrid*2の共同創業者であるRyan Sutton-GeeやSquare Foot社CEOのJonathan Wasserstrumなどの出資協力を得ることとなった。
 
CostCertifiedは「住宅建設のAmazonやshopify」を謳っているものの、基本的にB2Bのサービスである。つまり、施工業者の見積もりと調達という行為がAmazonなどのeコマースサービスのように簡単かつ即時に行える機能を提供する。
 
CostCertified Explainer Video | Interactive, Real-time Residential Construction Estimates
 
リンク:CostCertified Explainer Video | Interactive, Real-time Residential Construction Estimates
 
例えばリノベーションの場合、工務店は対象住居に出向き、顧客のニーズをインタビューし、必要に応じてショールームなどでサンプル資材を選んでもらい、これを見積もりにおこす。その結果とともに再びインタビューを行い、予算とディテールを詰めていくのだが、これに数ヶ月かかることは普通である。何より、要望変更とともに資材調達先に見積もりを依頼する必要があり、これらを組み直し、資材の納期や下請け工務店などの人員確保をを突き合わせて工期と見積もりを提示することになるので、その煩雑な業務たるや膨大なものである。
CostCertifiedはこの工務店の負荷を大幅に削減する可能性を秘めている。パンデミックで2年に渡り制限され続ける顧客コンタクトは、今後緩やかになるとしても、あと1年は一定の制約が続くだろう。何より、リモートに慣れてしまった顧客にとって、何度も物理コミュニケーションを強制されることはストレスでしか無い。さらに、現在のアメリカは住宅需要がかつて無いほどの活況を見せている。コロナ禍によるリモート需要で新築・リノベーション双方の需要が増え、さらには景気悪化の救済措置として住宅ローンが大幅に緩和され、そして、海運の世界的停滞によるウッドショックによって材木価格は高騰し、確保が困難になっている*3。企業体力と調達力が大手に及ばない中小の施工業者にとって唯一の武器はスピード。そのスピードを遅らせる主要因の一つだった見積もりとプロジェクト設計のタスクを、CostCertifiedは「まるでeコマースのような」機能性で簡便化する*1同Techcrunch。
 
Digital Construction Proposals & Estimates | Use CostCertified to Customize Your Digital Proposal
リンク:Digital Construction Proposals & Estimates | Use CostCertified to Customize Your Digital Proposal
 
多くのDXは消費者側の便利さとスピードへの要求から始まる、いわばユーザードリブンで始まってきたが、建築の世界はどちらかと言うと大手建設企業の内部改革意識から始まっていた。ここに来て、施工主求めるスピードと便利さを実現するための圧力が一気に高まるかもしれない。CostCertifiedはこの流れに対する答えの一つとなるだろうか。
 
 
引用情報:
*1
Techcrunch(2021), Y Combinator-backed CostCertified lands $8.45M to build the ‘Amazon for construction’, retrieved from https://techcrunch.com/2021/10/06/y-combinator-backed-costcertified-lands-8-45m-to-build-the-amazon-for-construction/
*2
DXNavigator(2020), ConTechと建設DX – BIMを中心に据えた世界の到来, retrieved from 
*3
Newsweek(2021),ウッドショックの激震、住宅木材価格は「平時の4倍」──中小工務店、ハウスメーカーは苦境 購入者への影響は? , retrieved from https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2021/06/4-148.php
 
参考情報:
CostCertified

 

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