ビスポークD2Cが切り開くアパレルのデジタルトランスフォーメーション 後編
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前回は主にD2Cというビジネスモデルについて説明した。今回は本題であるビスポークD2Cについて、米国を牽引する2社を例にお話していきたい。

■ビスポークと言うビジネスを分解する

ビスポーク、すなわちオーダースーツには大きく分けて3種類の形態がある。

1.フルオーダー

  • 採寸と型紙おこし(型紙はスクラッチで作る)
  • 本人専用の型紙作成と仮縫いで、体型補正が可能

2.イージーオーダー

  • 採寸と型紙おこし(型紙は既成のモデルパターンを利用)
  • ソフトウェアを使って、体型補正が可能(仮縫い工程はない)

3.パターンオーダー

  • 採寸とゲージ服によるフィッティング
  • ソフトウェアを使って、体型補正が可能(仮縫い工程はない)

上記は、いくつかのテーラーのWEBサイトの情報を参考に、フルオーダーをベースとして筆者が作成した行程表である。

基本的にフルオーダーはプロの手によって完結する、中世から続く伝統的なスタイルであり、本来的にはこれをビスポークと呼ぶ。この工程を簡略化したものがイージーオーダーやパターンオーダーとなる。両者に共通する点は、仮縫いと呼ばれる行程を無くしていることである。仮縫いとは、完成前に試着してもらい、最終的な体型補正を施すために行われる。猫背などの姿勢やいかり肩、なで肩などの骨格的特徴、また、スーツ着用時の行動(デスクワーク主体か、外回りが多いかなど)に合わせて、人間の動きの中でフィットする様に立体的に仕上げていくのである。ビスポークの真骨頂ともいえる行程であるが、これが故に納期が長くなり、コストも高くなる。イージーオーダーやパターンオーダーは、初回採寸精度の向上やソフトウェアの活用によって、この仮縫い行程を省略、コストダウンと短納期化を図っている。

また、イージーオーダーとパターンオーダーの大きな違いは、採寸時にゲージ服*1を使うか否かであろう。イージーオーダーは、体型パターンを網羅できる既成の型紙を組み合わせて使うことで、イチから型紙おこしをする時間と労力を削減するが、パターンオーダーはメジャーによる採寸とゲージ服を組み合わせることで型紙作成行程も省略する。

この3つのうち、完成品のクオリティがどれが高いか、という部分は一概に言えない部分が多い。フルオーダーは完全手製なのできめ細やかな対応が可能であるが、職人の技術とセンスに完全に左右されるし、生地やボタンなどのバリエーションは調達力に依存する。イージーオーダーやパターンオーダーも型紙やゲージ服のバリエーションと質によってはフルオーダーを凌駕できるが、補正や縫製はソフトウェアやそのオペレータのレベルに依存する。

ビスポークD2Cは、このようなオーダースーツの伝統的な行程を顧客価値から見つめ直し、デジタルを駆使して価値交換の仕組みを変えていく挑戦、すなわちオーダースーツ業界へのデジタルトランスフォーメーション(以下DX)であると筆者は考える。

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