NETFLIXは4度のDXで頂に立つ 2

3度目のデジタルトランスフォーメーション、VOD

前回はNETFLIXの創業から2回目のDXであるサブスクリプションへの挑戦までを見てきた。今回はその後のDX、すなわちVOD(ビデオ・オン・デマンド)以降について触れていきたい。

ご存知の様に、現在のNETFLIXはVODの企業である。それどころか、映像コンテンツ配給会社としての役割も果たしており、世間もそう認知しているだろう。しかしながら、それまでのビジネスモデルはあくまでDVDレンタル業であった。これをどの様にして転換させたのだろうか?

 

HBOによるホームエンタメの革命

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彼らがDVDレンタルを捨てた背景にはまず、アメリカのホーム・エンターテインメント(以下ホーム・エンタメ)事情を理解する必要がある。アメリカにおけるホーム・エンタメは長くケーブル・テレビ(CATV)に支配されてきたと言っていい。CATVはそもそも、通信状態が悪い場所のためにに開発されたインフラであり、地上波の受信とともにローカル番組を提供していた。国土の広さや大都会の電波事情も相まって、アメリカでは地上波を安定して観るためにCATVが浸透していく。そして彼らのビジネスは、衛星放送の登場で激変する。

1964年、アメリカ政府の61%出資と日本を含む140カ国の連合によって、国際電気通信機構(インテルサット)が設立され、翌年、アーリーバードと呼ばれる世界初の商業用通信衛星が打ち上げられた*1。この衛星網を活用したCATVのパイオニアが、今や誰もが知るHBO(Home Box Office)である。HBOは1965年にニューヨークで創業、当初は旅行者向けのテレビ番組ガイドをホテル向けに提供するCATVだった。当時のニューヨークは高層ビルの乱立で非常に電波状況が悪くCATV需要は大きかった。しかし、莫大な工事費によって収益化が難しかったため、創始者のCharles Dolanは有料サービスでテレビプログラムを流すアイディアを思いつき、Time Life社(タイム誌、ライフ誌を発行する企業)の出資を得てHBOを設立するのだが、収益が追いつかず、1973年にTime Life社に完全買収される。この時点まではニューヨークエリアのための閉域CATVであり、提供価値は地方CATVと同じ「安定した地上波視聴」であった。しかし、1975年、同社がインテルサットを活用して全米の他局CATVプロバイダーに番組配信を開始(初回はマニラで行われたモハメド・アリ vs ジョー・フレイザー戦の衛星生中継)したことで、HBOは衛星番組を常時供給する世界初の企業となり、ローカルの有線放送インフラから、コンテンツ配信業者に生まれ変わった。

HBOの出現によってCATVの価値は「地上波を安定品質で視聴する地方インフラ」から「より面白い番組を見る全国インフラ」に進化した*2。さらに、HBOが映画専門チャンネルであるCinemaxをスタートすることで(1980年)その傾向はより顕著なものとなる。ローカルに甘んじていた各CATV局、コムキャストやCoxなどは、HBOを含めた他局番組を買い取って有料の放映、いわゆるPay Channel(有料チャネル)放映を始め、スポーツのESPNやニュースのCNNのような専門的番組がどんどん生まれた。CATVは地上波よりイケてる番組を配給するインフラとなって、加入世帯はどんどん増えた。地上波もCATVに番組を売ることで視聴率と収益の両方を獲得できるのでむしろWin-Winである。視聴者目線から言えば、途切れない良質な放送が見られて、かつ衛星による世界リアルタイム中継が視聴可能で、各コンテンツプロバイダーが作る面白い番組が全国どこでも見られるならば、月額料金ぐらい支払って損はない。より面白い番組や映画を見たいなら、番組単体にお金を払ってもいい。かくして、CATVを経由した有料多チャンネル視聴が浸透し、CATVは1990年代のホームエンタメの中心になった。

 

衛星放送、インターネット、そしてVODの萌芽

20200409column02CATV加入世帯数は1993年の段階でTV所有世帯の60%を超え、1999年に69.7%のピークを迎え、少しずつ純減が始まるのだが*3、多チャンネル放送利用者は増え続ける。この伸びしろを支えたのは衛星直接放送(DBS:Direct Broadcast Sattelite)の事業者、すなわちDirecTVとDish(社名はEcho Star)である。DirecTVは1994年、Dishは1996年に放送を開始。以後順調に契約者を拡大し、2000年にはTV所有世帯の13%に到達する。CATVの契約率が減少する中、DBSはその勢力を伸ばし、2003年には世帯浸透率20%を超えるに至る*4。一方、CATVはDBSとの差別化を図るため、DBSでは提供できないインターネット回線の提供に力を入れ始める。NETFLIXが創業した1997年は、まさにCATVインターネット全盛の時代といえる。一方、VODもまた萌芽の兆しを見せ始めていたが、当時の回線速度は最大2Mbpsほどでテレビ受像可能なほどの動画配信はまだ難しく、あくまでパソコン上での小さな動画を観る程度のサービスであった。放送業界の誰もが「そのうちくるだろう」と考えていたが、同時に「まだ早い」という認識だった。

 

ともあれ、VOD前夜とも言える1990年代後半、CATVとDBSの競争とともに優良チャネルの市場は拡大していく。そして、いつしか両者はMVPD(Multichannel Video Programing Distributor:多チャンネル動画配信業者)と呼ばれるようになった。2000年代は、このMVPDがホームエンタメの中心となり、地上波やHBO、映画配給会社と言ったコンテンツ・アグリゲーターの番組を有料で供給するスタンダードが出来上がる。

NETFLIXが創業した時代背景は、MVPDによって有料放送が普通になり、インターネットの登場によってVODが可能になる将来が見え始めた、ホームエンタメの転換期の始まりの時代だった、といえる。CATVによって巨大化したHBOなどのコンテンツ配信業者達は、ビデオやDVD販売で二次収益を得てきた。レンタルビデオ業界はその二次収益を食いつぶす一方で、版権料という三次収益をもたらしてくれるパートナーでもある。このような微妙な均衡の上に、ブロックバスターや黎明期のNETFLIXのビジネスは成り立っていた。もし回線スピードが上がり、動画圧縮技術が進み、VODが技術的に可能になれば、コンテンツ配信業者は直販で動画レンタルを開始するかもしれない。そうすればビデオレンタル業はおしまいなのである。前回のコラムで述べたように、このVOD前夜の時代に生まれたNETFLIXは、立ち上げのときからVOD時代を見越していたのは間違いないだろう。

 

上場、そしてブロックバスターとの戦いに決着

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以前述べたとおり、NETFLIXのサブスクリプション型レンタルプランを含んだ新サービス、マーキー・プランは1999年にテストローンチ、翌2000年にはリコメンドエンジンのシネ・マッチとともに正式リリースされた。NETFLIXの創業が1997年なので、わずか2年でサービスモデルに転換を加えている。というのも彼らは当初からサブスクリプション型への移行は創業時から織り込み済みで、品揃えや会員数のサイズ充実とともに踏み切る予定だったと言われている。それでも、DVD販売や延滞料収益をバッサリ捨て、サブスクに移行するためのシステム開発投資を行い続けてきた胆力は驚嘆に値する。

何より彼らがマーキープランで勝負に出た年は、ブロックバスターがIPOした年である。当時のブロックバスターは会員数2000万人、全米6500店舗、業界売上シェア31%という業界の巨人であった。対するNETFLIXは30万人程度の赤字企業だったのだ。それでもNETFLIXは挑戦を挑み、2000年には単品レンタルを廃止して完全にサブスクリプション一本に移行。この間も財務状況が健全なわけではなく(99年には約3000万ドルの赤字を出していた)、ブロックバスターへ事業売却の提案をしたり(結果として破談に終わった)、大量解雇するほどギリギリの状態だった。

ほどなく両社は全面対決となり、ブロックバスターも店舗内サブスクリプションのムービーパス(月額30ドルで店舗内在庫を見放題)を開始する。それでもNETFLIXは着実に成長を続け、2002年にはNASDAQ上場を果たし、2003年にはとうとう会員数100万人を超えた。そしてその会員数はすべて毎月定額を支払う有効会員なのだ。対する巨人ブロックバスターは、2004年にはNETFLIXを完全コピーしたブロックバスター・オンライン(後にNETFLIXが訴訟)をスタートさせ、店舗とオンラインの全商品を月次定額でレンタル可能)を開始し、延滞料金も廃止するなどNETFLIX迎撃に力を割くが、急激な転換によるコスト増大や保守勢力の反対によって再び店舗モデルに回帰。その後はNETFLIXの独走を許し、ブロックバスターは2010年に破産する*5。

 

3度目のDX: VODへの挑戦

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快進撃を続けるNETFLIXが自らの収益源であるDVDレンタルを捨て、VOD移行を開始したのは2007年のことで、創業から10年目の決断である。

アメリカにおけるブロードバンド化、特に光回線(FTTH)による高速化は比較的遅かった。その理由は、皮肉にもCATVによるインターネット回線の供給モデルが大半を締めていたからである。大手CATVのコムキャストやタイム・ワーナーなどは、早くから下り1Mbps程度(日本で言えばADSL相当)の回線供給を早くから始めていたが、映画のストリーミングやダウンロードに耐えうる最低限、といわれる30Mbps程度を確保するにはFTTH網の浸透を待たなければならなかった。FTTHが進んだのは規制が緩和によって、AT&Tなどのテレコム企業がテレビサービスに乗り出せるようになってからである(2005年頃)*6。2005年にはYoutubeが創業し、2006年にはiTune Movie Storeが開始され*7、Amazon Videoの前身であるAmazon Unboxもスタートした。動画コンテンツ配給の世界にインターネットのプレイヤーが進出してくるようになった。そんな中ディズニーなどの大手配給会社がとうとうVOD供給を開始、大手配給会社がこぞって直接オンライン配信に乗り出し始めた。この流れの中、NETFLIXは2007年にインスタントビューイングと呼ばれるストリーミングサービスのプロトタイプを打ち出し*8、翌2008年には韓国のLGと組み、テレビでのVODを実現するための独自セットトップボックス(STB)のRokuを発表、即完売の大成功を収める。2020年現在、3230万人のユーザーを抱え、Amazon Fire TVとシェアを二分するSTBである。Rokuの登場によって、NETFLIXはテレビに直接配給可能なVOD企業となり、事実上のMVPDとなった。

 

ところで、実は、NETFLIXは郵便DVDレンタル事業をまだ続けている。Rokuの発表後、Qwickstarという会社をスピンアウトさせ、郵便DVD事業を切り離す予定だった。これにより、NETFLIXの売りであった予約機能のQUEUE(キュー)と、リコメンド機能のシネ・マッチが分離する(VODとDVDレンタルの予約リストは別モノになる)ことになるため、両方を楽しみたいコアユーザーは激怒。さらに、主力商品であるハイブリッドプラン(郵便DVDとVOD両方の借り放題を月額定額で提供する)の値上げを同時に行ったことで火に油を注いだ形になり、100万人の会員脱退と株価の暴落($305から$65まで落ちた)を招いた*9。ちなみに、この2008年は リーマン・ショックの年であり、不況による娯楽の節約傾向も手伝ってNETFLIXは爆発的人気を得ていた。その中での旧顧客切り離し(郵便DVD撤退)と値上げだったので、多くのユーザーは足元を見られたと感じた。フェアな価値提供で顧客を得たNETFLIXが、最悪のタイミングでアンフェアなことをやってしまったのだ。結果としてNETFLIXは郵便DVD事業の切り離しを当面諦め、VODが当たり前になり始めた2016年に、DVD.comという別サービスへ切り離した。2018年のMarketing Interactiveの記事によると、同事業は減退しているがまだ収益を生んでおり、少なくともあと5年は続けるということである*10。

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VODというDXが変えるべきものと守るべきもの

NETFLIXは、VOD時代の到来を見越して、オンラインを土俵とする多チャンネル動画配信業者、すなわちMVPDとなるべく舵を切った。御存知の通り、結果としてこれは当たるのだが、何故このタイミングで舵を切れたのかを考察してみよう。

先述のように、2000年代はCATVや衛星放送全盛の時代であり、回線スピードや配信技術的にVODでの収益化は難しかったと言えよう。それでもネットバブルによって多種多様なVODスタートアップも出現し、各企業はVODへの投資を開始していた。ブロックバスターですらエンロンと共同でVOD進出を計画していた(2001年エンロン社の破綻で白紙)背景がある。むしろ2007年のNETFLIXのVOD進出は遅い方だったといえる。NETFLIXは創業当初からVOD時代の到来を見越していたが、出るべきタイミングはテレビ配信が可能になってからと考え、回線と技術が調和するタイミングを待っていた。しかし、進出が遅ければコンテンツメーカーや大手MVPDが直接VODを行うようになり、NETFLIXは次世代MVPDとしてのチャンスを失うかもしれない。そういう意味では2007年は絶妙なタイミングだった。

VODの概念はインターネットの商用化以前から提唱されていた(1990年代前半)もので、これがホーム・エンタメの価値提供プロセスを大きく変えるであろうことは、映像業界やIT業界には周知の事実であった。テレビや映画など、従来型の動画コンテンツは配信者の都合に合わせて配信される。コンテンツを観たければ、放映時間にテレビの前に座るか予約録画が必要だ。見逃した場合はレンタルする。しかし、VODになれば、観たい時に観たいコンテンツを見ることができ、視聴者側に視聴タイミングの選択権が委ねられる。無限在庫のコンテンツを観たいときに、家に居ながらにして観ることができる。視聴者ニーズがそこにあるのは明らかだ。しかし、広告収益を持つMVPDは非常に困る。CMのタイミングがコントロールできないので、いわゆるゴールデンタイムなどの高値枠をキープできなくなる。過去の番組を好きな時に観られるようになれば、再放送枠の収益も逃してしまう。結果として、従来型MVPDはテレビの上でのVODに積極的になれなかった。あくまで「書斎にあるパソコンでのエンタメ」の中でとどめたかった。

同時に、従来型MVPDはこの時点でブロードバンド回線料金という、新しくて巨大な収益源を手にしていた。NETFLIXは、ブロードバンド回線需要を高める役割として、悪くないアライアンス相手だった。まだ始まったばかりのオンライン視聴は規模も小さく、映像業界から見れば傍流といった過小評価も受けていたので、NETFLIXは猛烈なスピードで、かつ安価にアグリゲータから配信権を獲得することが出来た。旧世代のMVPDが、既存収益の旨味とVODという未来に天秤を賭けて迷っていた間隙を縫って、NETFLIXは一気呵成にVOD化をすすめることで、次世代MVPDとして圧倒的先駆者にのし上がった。

価値という目的、プロセスという手段

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ところで、VODというDXが成立するための絶対条件は何であろうか?もちろん、先に述べた「観たい時に観る」という消費者価値を満たせる配信力であり、コンテンツ在庫であることは間違いない。しかし、それ以上に大事なことは、「良質なコンテンツを楽しむ」という根源的な提供価値であり、ホームエンタメに求められる本質部分である。たとえ観たい時に観ることが出来ても、劣化画質でコマ落ちなどしていれば楽しむ以前の問題である。かつてCATVがそうであったように、安定した画質でコンテンツを配信できる価値がぶれてはいけないのだ。FTTHによる本格的なブロードバンドの浸透と、動画をスムーズに再生できるSTBの存在は、根源的価値を成立させるために不可欠だった。

筆者は、再三「DXは提供プロセスの改革による新しい価値の創造」と訴えてきたが、NETFLIXのVOD進出はこのことを雄弁に語る。DXを試みる多くの企業は、プロセス改革そのものをDXであると語りがちである。しかし、提供価値が歪んだり、劣化してしまっては、プロセス改革は何の意味も持たないのだ。DXは、デジタル技術によって、顧客の価値入手に必要な負荷を小さくし、可能ならばプロセス体験自体を新しい価値に変えて付与し、根源的な価値を最大化することだと言える。しかし、プロセス変革によって新しい価値を生み出しても、従来の根源的価値を損なったならば、そのDXは自己満足でしか無いのだ。

NETFLIXは、「購入するより安価」というレンタルビデオの根源的価値を遵守し、「観たいコンテンツに出会い、消費できる」ための負荷を最小化することで、「サブスク負けしないサブスクリプション」というフェアな価値交換を実現した。そして、VODへのビジネス転換にあたり、「良質なコンテンツを楽しむ」という根源的価値を見つめ直したのである。その価値実現にはテレビというスクリーンとブロードバンド、STBによる圧縮映像の受信再生技術は不可欠なプロセスだった。VODは「観たい時に観る」という新しい価値を創造するが、「良質なコンテンツを楽しむ」という目的を達成できなければ、最終的な提供価値はむしろ小さくなる。NETFLIXは常に目的と手段の関係性を注意深く見つめながら変革を繰り返してきたのである。

 

DXを阻む、顧客という保守の呪縛

 

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またNETFLIXは、既存収益モデルの切り離しを試み、失敗に終わっている。ブロックバスターや従来型MVPDなど、多くの企業は過去の収益モデルに引っ張られ、新しいことに踏み出せなかった。そして、勇敢に切り離す決断を見せたNETFLIXもまた、既存ユーザーの反対によって郵便DVD撤退を断念している。

このことが意味するのは、企業よりも前に、顧客の保守性がDXを妨げるということかもしれない。過去に成功した収益モデルは顧客によって支えられたものである。時代の趨勢が転換期に入ろうとも、変わりたくない顧客は常に一定数存在する。たとえ未来には時代遅れになるとしても、現行サービスの継続を願う顧客は企業の保守性を期待するのだ。皮肉にも、自社のサービスを愛し続けてくれる顧客こそがDXを妨げ、移り気で数も少ないイノベーターやアーリーアダプター層が企業にDXを求めているとも言えよう。ディスラプターとして生を受けたNETFLIXのような企業でさえ、顧客を持った段階で保守の呪縛に囚われる。自らを変革することはどんな企業にとっても簡単なことではないことを表している。それでもNETFLIXがVODという変革を押し通したのは、創業当初からVODによる「DVDの死」を確信していたからであろう。そして、保守顧客から多少の返り血を浴びてでもVODの価値を自分のものにしなければ生き残れない、という判断があったのは間違いない。ちなみに、実行タイミングは最悪だったが。

すべてのビジネスに言えることだが、払いのいい顧客は基本的に保守的であり、その声だけに従っていると変革のタイミングを失ってしまう。拾うべき声はむしろ移り気なくせに要求の高い顧客たちである。根源的な提供価値を守り続けても、提供プロセスを変革し続けなければ、いつかディスラプターの餌食になる。逆にそれができれば、提供プロセスそのものが新しい付加価値となり、差別化要因となって、次の市場で生き残るための競争力となるのだ。NETFLIXの変革を後押ししてきたのは経営陣や技術革新だけではなく、ブロックバスターやCATV、そしてiTuneやYouTubeといったライバルたちの存在と、そのサービスを併用してきた移り気な顧客たちの声である。NETFLIXの次なる4度目のDXもまた然りである。そしてそこにはAmazonという、強力なライバルであり、市場変革の同志の存在があった。

次回はAmazonとの競争から生まれる、4度目のDXについて触れていきたい。

引用情報:
*1
Wikipedia(2020), インテルサット, retrieved from
https://bit.ly/2TSTywP
*2
Wikipedia(2020), HBO, retrieved from
https://bit.ly/39Cz1mG
*3 FCC(2002), 8th Annual Video Competition Report, retrieved from
https://www.fcc.gov/reports-research/reports/video-competition-reports/8th-annual-video-competition-report
*4
総務省(2005), 米英の衛星放送等の現況, retrieved from
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/eisei_houso/pdf/051014_2_san2.pdf
*5, *9
Keating, G. (2012). Netflixed: The epic battle for America's eyeballs. Penguin.
*6
KDDI総合研究所(2010), 米国ブロードバンド事情, retrieved from
https://rp.kddi-research.jp/article/RA2010013
*7
Wikipedia(2020), iTunes Store, retrieved from
https://ja.wikipedia.org/wiki/ITunes_Store
*8
Wikipedia(2020), Reed Hastings, retrieved from
https://en.wikipedia.org/wiki/Reed_Hastings
*10
Marketing Interactive(2018), Netflix CEO predicts 2018 revenue to grow to about US$15bn, retrieved from
https://www.marketing-interactive.com/netflix-ceo-predicts-2018-revenue-to-grow-to-about-us15bn

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