ポストZoomのビデオ会議ツールを考える(アメリカの場合)

コロナウイルスの影響により世界中のテレミーティング需要が高まっている中、その旗頭とも言えるZoomが、セキュリティ上の脆弱性を露呈してしまった。もともと問題になったのは仕様上の問題であり、ホストがミーティングルームにロックを掛けていない場合、そのURLを知っているものは誰でも参加して会議を閲覧できてしまうことが一つ。そして、会議中のチャットで特定のリンクを送信し、それをクリックしたユーザーのパスワードを抜き取ることができ、アカウントハックを許してしまうことが問題の発端だった。

これによってZoom Bomberなるハッカーがアカウントを乗っ取り、他人の会議で誹謗中傷をばらまいたり秘匿情報を抜き取るという事件が多発、3月30日にFBIから注意喚起を受けた*1。

 

さらに、4月3日には、Zoomの通信データが中国を経由しているという問題で、カナダのグローバルセキュリティ研究所、Citizen Labによって指摘された。CEOのEric Yuanの弁明によれば、コロナウイルス問題による需要の急激な増加に伴い、本来ジオフェンシング(地理的に特定エリアへのネットワーク通信を制御すること)によって遮断されているはずの中国ルートが使われてしまったという(現在は遮断中としている)*2。実際、Zoomはそもそもエンド・トゥ・エンドのセキュリティが脆弱だったというセキュリティ上の「緩さ」が大きな問題なのだが、CEOが中国出身だった(今はアメリカ国籍に変更)ことや、ライバル会社のWebEx(Cisco Systems傘下)出身であることが話をややこしくしている。Huawei事件などで、中国当局への情報漏洩が世界中、特にアメリカがナーバスになっている中での「中国ルート」判明が拍車をかけてしまった形である。既に問題点は解決しているという発表があり、彼らに悪意は無いと信じたいが、信頼回復には時間がかかるだろう。

 

そんな状況でにわかに「Zoom以外」のテレミーティング・ソフトウェアが注目を浴びている。今回は、米国ZD-netが運営するTechRepublicが勧める「Zoom以外の10の選択肢」をご紹介する*3。

 

1.Microsoft Teams

Office365にバンドルされているビデオ会議機能。Office365の法人ライセンスに加入していれば基本的に無料で、250人まで同時アクセス可能。10GBまでファイル共有が可能。ビジネスプランなら、ファイル共有が1TBまで拡張され、各種管理機能も充実する。Slackとビデオチャットが一緒になったような感じ。企業として、社員に配給した会社PCで公式会議を管理したいならおすすめのツールだが、スマホやタブレットなどでのアクセスだったり、Office365が入っていないMacなどを使うときは少々面倒なことになる。

サイト:

https://products.office.com/en-us/compare-all-microsoft-office-products?activetab=tab:primaryr2

 

2.Skype

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長い歴史を持ち、忘れてしまいそうだが今はMicrosoftの1サービスである。モバイルアプリなどがむしろ強く、Microsoft Teamに向いていない自由さやライトさが欲しいほしいならばこちら。50人まで同時アクセスでき、時間無制限のビデオ会議が可能。実は会議録が機能が便利。

 

サイト:

https://www.skype.com/en/

 

3.GoToMeeting

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月額14ドルで利用可能な有料ビデオミーティングアプリで、150人まで同時会議可能。GoToWebinarなど法人向け関連商品も多数。エンタープライズ版なら最大3000人の同時接続が可能。ネット通信だけでなく電話回線による音声参加も可能。ホワイトボード機能もある。

 

サイト:

https://www.gotomeeting.com/meeting/pricing

 

4.Join.me

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GoToMeetingの廉価版サービスで、同時アクセスは3人まで。無料版はビデオ通話は出来ず、音声と画面共有のみが可能。会議というよりもセミナーやオンラインデモに向いており、大学授業などでも使われることが多い。Pro版は月額20ドルで、最大250名の会議参加者、50 GBのクラウドストレージ、10のWebカメラストリーム、録画オプション、およびスケジューリングが可能。

 

サイト:

https://www.join.me/

 

5.Cisco WebEx

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老舗ビデオ会議ソフト。無料版は3名までホストアカウントを持て、同時アクセス100名で最長40分。画面共有はもちろん、HD映像に対応、録画も可能。ビジネスプランは月額26.95ドルで1ホストあたり200名参加が可能だが、最低5ホスト分のライセンス契約が必要とする。機能、安定性ともにいたれりつくせり。

 

サイト:

https://www.webex.com/ja/index.html

 

6.Blue Jeans

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小規模向けビデオ会議ツール。最低価格帯のMeは月額19.98ドルで最大50名同時参加可能。その上のクラスMy Teamは23.99ドルで75人同時アクセスと10時間まで録画可能、共通ダッシュボード機能も提供。

 

サイト:

https://www.bluejeans.com/

 

7.Intermedia AnyMeeting

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ビデオ会議、チャット、画面共有、音声通話を提供し、エンド・トゥ・エンドの暗号化とHIPPA(アメリカにおける医療情報保護関連法)に準拠した医療情報保護に対応しており、セキュリティ面を強みとする一方、HD画像による映像品質も差別化要因の一つ。無料のStarter、月額9.99ドルのLite、および月額12.99ドルProという価格帯で提供していたが、コロナウイルスの影響を受けて、2021年まで、ユーザーは無料でProを利用でききる。Proは最大30人までの同時アクセスで、音声通話なら200人まで可能。会議録画や議事録起こし、会議参加者がスライドに注記加筆やマーキング(気になる部分を丸で囲うなど)できるアノテーション機能などが充実。小規模会議が中心ならば、かなり高機能である。

 

サイト:

https://www.intermedia.net/anymeeting-video-conferencing

 

8.Google Hangouts Meet

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2019年9月に従来のGoogle Hang Outがリニュアールして現在の形となり、基本的にG Suite利用者のためのツールだが、外部参加者も招待を受ければアクセス可能。G Suite Basicは最大100人まで、Businessは150人、エンタープライズなら250人の同時アクセスが可能。Livestream(会議というより公演や発表につかう)で最大10万人まで同時配信可能で、全社集会などにも向いている。会議録画はG SuiteのEnterpriseユーザーのみ。

 

サイト:

https://gsuite.google.com/products/meet/

 

9.Ring Central

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最大100人参加で40分までのグループ会議と、無制限での1on1会議を無料で提供する。次のクラスであるEssentialは月額14.99ドルでグループミーティングが時間無制限、1000分の無料電話通信(Call Me と呼ばれる同社回線による音声通話サービス。日本のLINE Talkに近い)が付く。Office Premiumを契約すれば、通話とビデオ会議がセットになり、北米カナダ圏内での通話無料や、ボイスメールのテキスト化配信などが可能。国内電話代が無料になるだけでも、米国内では非常に便利でお得なサービスである。

 

サイト:

https://www.ringcentral.com/office/how-it-works.html

 

10.Zoho Meeting

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日本ではまだ地味な存在だが、米国ではかなり有名なCRMプラットフォームのZohoの提供するサービス。

最低価格帯は1ホストアカウントあたり月額10ドルで、100人まで同時アクセス可能。音声会議、ビデオ会議(いずれも電話参加可能)、画面の共有、録音(10件まで)、カレンダーによる会議招待などの機能がある。Webinarプランは月額19ドルで25人同時アクセス、最大で250人25録画までアップ可能。

 

サイト:

https://www.zoho.com/meeting/meeting-pricing.html

 

ちなみに筆者は基本的にZoomユーザーであるが、最近はGoogle Hangout Meetの利用が多い。在米中はビジネス・カンファレンス参加のときにGoToMeeting、大学の授業でJoin.meを使い、友人とはHangOutやWhatsUp使い、中国人の友人とはWeChat、日本とのやり取りはLINEと様々なツールを使い分けていたが、これはビデオチャットと会議が入り乱れていた数年前の状況である。Zoomはもともとビデオチャットの傾向が強かったが、コロナ禍によって一斉にビジネスユーザーがトライし始めたことで、様々な脆弱性が一気に浮き彫りになったと言えるだろう。一方、Google HangoutやMicrosoft Teamsはテキストチャットからの派生だからか、ビデオ会議としては操作性に色々難がある。今後、有料の高品質ビデオ会議ソフトウェアが浸透していく中で、様々な淘汰と成熟が起こるだろう。

 

引用情報:
*1
東洋経済(2020), 利用者が爆増「Zoom」を使うと何が危ないのか,
retrieved from
https://toyokeizai.net/articles/-/342571
*2
IT Media(2020), Zoom、北米のWeb会議の暗号キーを誤って中国データセンター経由にした問題について説明,
retrieved from https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2004/05/news010.html
*3
TechRepublic(2020), Top 10 Zoom alternatives for video conferencing,
retrieved from https://www.techrepublic.com/article/top-10-zoom-alternatives-for-video-conferencing/

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