ワークマンの快進撃 ―脱ECモールは進むか
35+

超強気!? なぜワークマンは楽天から撤退するのか ―「店舗受取」の勝算とは

突然だが、筆者はワークマンの愛好者の一人である。筆者が学生時代を送った群馬県はワークマンの母体であるベイシアグループのお膝元であり、貧乏学生である筆者が道路工事や警備員などのアルバイトをするとき、ワークマンでの資材調達は至極当然のことだった。軍手はもちろん、安全靴や雨合羽など、ガテンな仕事に必要なものは全て安価に揃う。それがワークマンである。

そのワークマンは、ここ数年快進撃を続けている。筆者は釣りを趣味にしているのだが、釣り具メーカーの防水ウェアや防寒ウェアは非常にお高い。おしゃれを狙ってアウトドアブランドを選べばもっと高い。何より、塩でやられるのでどんなに高くていいものでもなかなか長持ちしない。そこでワークマンの登場である。2013年ころからイージスといわれる工事作業者向けの防水ウェアシリーズが発表された。これにバイク乗りが目をつけてソーシャルメディアの投稿で拡散。一躍「コスパ最強の防水ウェア」として有名になった。当然、釣り愛好家にも好まれ、筆者も2セット常備している。

フォトクレジット:ワークマン 三田店

 

話が脱線したが、そのワークマンがこの2月に楽天での出店から撤退した*1。現在楽天で売っているワークマン商品は全て、転売屋さんのものになった。現在ワークマンは自社商品を自社店舗もしくは自社ECで販売している。そして、現在も売り上げは好調である。同社のIR発表によれば、楽天市場から離脱した2020年2月の売上でも、前年比132.9%、コロナ禍で市場が落ち込んだ第1四半期でも減退すること無く成長を続け、6月には前年比144%をマークしている*2。

先述の文春の記事は、ワークマンのブランド力が向上し、指名買いが発生する中で、楽天出店の意味が薄くなった、というのが基本論調となっている。実際、それは正しいだろう。そして、もう一つの論調がC&C(クリック&コレクト)の実践である。別の言い方をすればBOPIS(Buy Online Pick Up In Store: 欧米ではこの呼び方主流)であるが、要はネットで買って店舗で受取することだ。同記事によればワークマンのネット通販の67%がC&C(BOPIS)であるという。

店舗型企業にとって、BOPISは今後非常に重要である。アメリカではWalmartやMacy’s、Home DepotやBest Buyなど名だたる店舗型小売が2015年ころには皆導入しており、これがあったおかげでコロナ禍を生き抜いたとさえ言われている。スマホで注文して、レジで並ばずに受け取る。店内を徘徊して新商品を見つけ、試着し、またネットで決済して、後で店舗に取りに来る。接触・混雑を避けたいコロナ禍には極めてフィットし、今やデジタル・ディバイドと言われた老年人口もBOPISを積極利用するようになっている。

それでも、楽天からの撤退は怖いだろう。自前でECを展開すれば、広告集客や機能や使い勝手の秀逸さで楽天やAmazonと対決しなければならず、デジタル人材も確保しなければならない。配送、在庫管理は言わずもがなである。しかし、ワークマンには楽天が喉から手が出るほどほしい「店舗」という資産がある。消費者にとっては不在の家に届けられるより、店舗で受け取ったほうが確実だし、急ぎの場合はなおさらである。アフターコロナの消費者はデジタルと店舗の利点を、時と場合に応じて使い分ける。入手手段が配送だけでも、決済手段が店舗だけでも、それは不便であるということに気付いてしまった。今後EC専業は、消費者のニーズを満たすには片手落ちになってしまうのだろう。ワークマンは、ECモールとしての楽天の強さと自社の優位性とを天秤にかけ、後者を選択したのだ。

文春の同記事では、全ての小売業が楽天を飛び出せるほど甘くはないと主張する。だが、筆者は楽観的に捉えている。というより、ECモールという役割が変わろうとしていて、ワークマンはそれに気付いたと考える。これまで、ネットで売れるためには集客力のあるデパートとしてのECモールに出店するのが近道だった。しかし、ブランドさえ認知されてしまえば、デパートに出店する必要はなく、むしろ中間搾取のデメリットが残る。そして消費者もそれに気付いている。特定のブランドを指名買いしたければ、オフィシャルショップで買えば良い。むしろ、楽天やAmazonでは買えないものだからこそ価値が出る。現在アメリカで起こっているアンチ・アマゾンのトレンドは、Amazonで変えるものはベタであり、転売であり、Amazonを中抜利益で肥えさせるだけだ、という辛辣な背景があるのだが、日本市場もだんだんそこに近づいてきている。そして、コロナ禍がこれを加速させていく。今後、ECモールは売る場所ではなく、ブランド認知や価格チェックなどのショールームとしての場になっていくだろう。ワークマンの卒業と成功がそれを物語っている。

 

*1 文春オンライン(2020), 超強気!? なぜワークマンは楽天から撤退するのか ―「店舗受取」の勝算とは, retrieved from https://bunshun.jp/articles/-/29766

*2 ワークマン(2020), 月次報告, retrieved from https://www.workman.co.jp/ir%E6%83%85%E5%A0%B1/%E6%9C%88%E6%AC%A1%E5%A0%B1%E5%91%8A

この記事が気に入ったら フォローしよう

最新情報をお届けします。

Twitterでフォローしよう