水素電気自動車スタートアップのNikola、使命に向けての仕切り直し

2015年にトレバー・ミルトンと彼の兄弟とともに創業されたNikola Motor Company(現Nikola Corporation)は、2016年からゼロエミッション※をコンセプトとした水素エンジンを搭載したEV車をいくつも開発し、発表している。そのコンセプトカーのスペックは非常に魅力的で、燃料エンジンによる排ガス空気汚染の地球環境問題を考える人々にとって希望の星ともいえる企業である。
※環境を汚染したり、気候を混乱させる廃棄物を排出しないエンジン、モーター、しくみ、または、その他のエネルギー源(wikipediaより)

そんなNikolaにとって2020年は壮絶な1年になった。

ことの発端は2020年6月。VectoIQ Acquisition Corporation(ticker VTIQ)からの買収合併とともに上場し、Nikola Corporationとなった。直後、投資家が一斉に電気輸送の成長に投資、Nikola株価は2倍以上に膨れ上がり、8月にはゼロエミッションの電動ゴミ収集トラックを2500台受注したと発表し、大きな話題を呼んだ。

 

“その電動ゴミ収集トラックはNikolaのTreパワートレインシステムを搭載し、1回のフル充電で150マイル(約241km)走行できる。バッテリーパックの容量は720kWh、一方のパワートレインはソフトウェアで1000HPに制限される。Nikolaはトラックのシャシーとボディの生産・組み立てを請け負う。“
引用元: https://jp.techcrunch.com/2020/08/11/2020-08-10-nikola-stock-surges-on-order-for-2500-electric-garbage-trucks/
 

Raquel Baranow, CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

過去発表されてきたゼロエミッション車と比べて画期的なパフォーマンスである。

CEOであるマークラッセルはNikolaが開発するゼロエミッションの電動ゴミ収集トラックについてこう語っている。

“「これはゲームチェンジャーになる、ゴミ収集トラックの顧客はこれまでいつもトラックOEMにキャシーを、他のサプライヤーにボディを発注していた。Nikolaはキャシーとボディを完全に統合させていて、1つの工場で作業を行う。トラックにはいずれも自動化されたサイドローダーとフロントローダーが搭載される。すべてゼロエミッションだ」”
引用元: https://jp.techcrunch.com/2020/08/11/2020-08-10-nikola-stock-surges-on-order-for-2500-electric-garbage-trucks/

 

 

発表当時、生産工場を持っていなかった彼らの計画では、受注したトラックは、2022年にロードテストを実施し、翌2023年に生産を始める見込みになっていた。

2020年9月にはGM(モーターズ)が20億ドル(約2120億円)を出資する戦略的パートナーシップが決まったと発表され*1、いよいよ生産が始まりNikolaのゼロエミッショントラックが世界中を走り回る明るい未来に世界が注目していた。*2

 

そんな中、暗雲が立ち込める。GMとのパートナーシップ決定の発表の同日、空売り投資家Hindenburg ResearchによりNikolaの詐欺行為の告発レポートを公表されてしまう。

Hindenburg Researchは自社メディアにて、2018年に公開したNikola Oneのプロモーション動画の捏造疑惑など50にもおよぶトピックスで同社技術の虚偽を言及している。

https://hindenburgresearch.com/nikola/

これをきっかけに順調だった株価も大暴落、GMとのパートナーシップは一時保留となった。

 

トレバー・ミルトンによる、長文(かつ丁寧な文章で)の弁明もされたが、依然誇大広告によるプロモーションは問題視されたままである。
その後、ミルトンは突如代表を辞任。

 

Twitter(ツイッター)では

「重要なのは世界を変える可能性のあるこの会社の使命であり、
私自身ではない。
外野席から私に向けられた非難に対し個人として身を守る」

と述べた。

辞任後、スティーブ・ガースキーが取締役会会長に就任する。*3

 

怒涛の2020年を過ごしたNikola。
今後のビジョンのプレスリリースを2020年9月30日に発表した。

Nikola Tre Battery-Electric PrototypesNikola Tre Battery-Electric Prototypes

 

2020年の終わりまでにドイツの工場ではニコラ・トレ・セミトラックのテストが完了し、来年の第4四半期には生産と顧客の利用開始、水素ステーションのネットワークのパートナーをアナウンスするという。さらに、アリゾナ州での工場は2022年に製造を開始、2023年に施設の追加建設が続く。当初と予定は変わっていない。*4
また、10月に入ってからは製造業や産業技術、運輸、スマートモビリティ業界において長年キャリアのあるブルース・スミスやスティーブ・シンドラーを取締役として迎えること、
また、11月30日には保留されていたGMとの戦略的パートナーシップは、「水素燃料供給に関するMOU(Memorandum of Understanding)」に変わり、署名の完了が発表された。*5*6

彼らの前向きな動きが未来のクリーンな燃料自動車の世界を切り開く一手となることが期待されている。

 

引用情報:
*1
Techcrunch(2020), General Motors takes $2 billion stake in electric truck startup Nikola, retrieved from
https://techcrunch.com/2020/09/08/general-motors-takes-2-billion-stake-electric-truck-startup-nikola/
*2
Nikola(2020), Nikola and General Motors Form Strategic Partnership, retrieved from
https://nikolamotor.com/press_releases/nikola-and-general-motors-form-strategic-partnership-94
*3
Nikola(2020), Nikola Appoints Steve Shindler to Board of Directors, retrieved from
https://nikolamotor.com/press_releases/nikola-appoints-steve-shindler-to-board-of-directors-100
*4
Nikola(2020), Nikola Executing Strategy and Vision to Deliver Innovative Technology, Energy and Transportation Solutions, retrieved from
https://nikolamotor.com/press_releases/nikola-executing-strategy-and-vision-to-deliver-innovative-technology-energy-and-transportation-solutions-98
*5
Nikola(2020), Nikola Appoints Bruce Smith to Board of Directors, retrieved from
https://nikolamotor.com/press_releases/nikola-appoints-bruce-smith-to-board-of-directors-103
https://nikolamotor.com/press_releases/nikola-appoints-steve-shindler-to-board-of-directors-100
Cision(2020), Nikola Appoints Bruce Smith to Board of Directors, retrieved from
https://www.prnewswire.com/news-releases/nikola-appoints-bruce-smith-to-board-of-directors-301163455.html
*6
Nikola(2020), Nikola Signs MOU with General Motors, retrieved from
https://nikolamotor.com/press_releases/nikola-signs-mou-with-general-motors-105

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