マイクロレンディングの変化球、小規模建設業者向け資金調達サービスhandle.comの奮闘

建設業界のDXに関しては以前キーコラムで特集しているが、多くの場合、BIM(
Building Information System)、すなわち設計からプロジェクトマネジメントに集中している。少なくとも世界規模では。実際、ゼネコンのような大手企業や建築事務所が大型プロジェクトの根幹を握っており、彼らのマネジメント効率向上が全体の効率向上に直結するのは間違いない。

一方で、実際の現場で動く人たちはどうだろう?下請け孫請けが当たり前のこの業界には、零細工務店やフリーランスがいっぱい存在する。そして彼らは、大企業のような資金力を持っていない。案件が目の前にあり、素敵な技術を提供しても、プロジェクトが完了する6ヶ月先まで無収入で暮らせるわけもない。さらに言えば、BIMなどでプロジェクト管理がクラウド上に入り、コスト管理もプラットフォーム化され、職人への受発注が電子化されたとして、彼らはそのシステムに接続できないだろう。依然として紙ベースの伝票処理を行い、工務店は売掛金や手形と格闘し、短期借り入れに奔走するかもしれない。

handle.comは2019年に設立した生まれたてほやほやであり、先述の建設業界事情に対応すべく生まれたスタートアップである。そして、DropboxやAirbnbなどのキラキラなデジタル企業を生んだY Combinatorの出身である。個人的には、T Combinatorがこんな地味な(失礼)、リアリティあふれるビジネスを支援するとは思っていなかった。正直見直している。Techcrunchによるとhandle.comはこの3月、450万ドルをVCから、2000万ドルを借入によって調達した*1。

ともあれ、handle.comは、マイクロ・レンディング(小規模貸付)を軸とする、いわゆるFintech(フィンテック)企業である。ただ、その対象が建設業者という点がユニークである。先に述べたように、建設作業に従事する工務店やフリーランスは、常に資金繰りに奔走する。建設プロジェクトの多くは、施工完了後にフィーが支払われる受託契約がほとんどだが、大規模建設などは兵器で10ヶ月以上の工期を費やす。その間、無収入では大変なので、仕掛り金や途中支払いなど仕組みがあるが、それでも支払いが数ヶ月サイトになることはザラである。この間の資金繰りが、工務店経営者の苦しいところだ。

Handle.comは、施工業者と請負業者(もしくは個人)の間に立ち、お金の流れを担当する。すなわち、ゼネコンなどの施工業者はhandle.comに支払いを一本化し、同時に請負業者はhandle.comに請求を行う。施工業者は膨大な請求事務から解放され、請負業者はパソコンやスマホから請求を完了させることができる。Handle.comが間に入って、プロジェクト完了前に支払いを分割させることも可能である。また、請負業者が資金繰りに困っていれば、売掛金やこれまでの信用をベースに貸付を行う。貸付与信はhandle.com独自のアルゴリズムによって成立し、銀行への与信参照は発生しない。すなわち、請負業者のクレジットヒストリーに傷がつかない。

 

画像:retrieved from handle.com

画像:retrieved from handle.com

 

つまり、Handle.comは、請負業者の入金サイトを最適化し、短期貸付を行う第三者金融機関としての位置づけになる。ゼネコンなどの施工業者にとっては、支払い代行であり、請求事務の一括化代行業者である。

金融機関にアクセスできない多くの建設労働者たちや、貸し渋りに悩む工務店にとっては朗報である。実際、小規模なリフォームの場合、フリーの建設業者はHome Depotで自ら資材を仕入れることも多いし、新しい現場に必要な工具を揃えるにも資金が必要だ。筆者が在米中、「3ヶ月後にはまとまったカネが入るけど、今はない。だから夜はUberで働いている」という人たちに何度遭遇したかわからない。工務店経営者に至っては、銀行巡りは日常業務である。巨大な売上規模

を持ち、もっとも効率化が遅れている、と言われている建設業界において、handle.comがもたらすインパクトは、ある意味BIMよりも大きいかもしれない。

ただし、他のフィンテック企業がそうであるように、ただの高利貸しになる危険もはらんでいる。
UberやWalmartも自前のフィンテックを展開しているが、多方面から「従業員から搾取する新手のサラ金」として非難を受け続けている。handle.comの貸付利率は不明だが、まっとうな利率を維持することを切に願う。それさえできれば、心から応援したいサービスである。

 

引用情報:
*1
Techcrunch(2020), Handle.com helps independent construction workers get paid on time, retrieved from
https://techcrunch.com/2020/03/13/handle-com-helps-independent-construction-workers-get-paid-on-time/

参考情報:
NewsDio(2020), Handle.com Helps Freelance Construction Workers Get Paid On Time – Newsdio, retrievd from
https://newsdio.com/handle-com-helps-freelance-construction-workers-get-paid-on-time-newsdio/69566/

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