コロナ禍をものともせず、2020年中国IPOは今年も進む

中国の2020年4-6月期のGDPは成長に転じた。コロナ禍の全四半期(1-3月期)からの復活だけではなく、昨年の同期比で3.2%の成長となった。
BBCなどの報道によれば、この成長を支えているのは政府による積極的なインフラ投資であり、雇用状況も厳しく、小売業は未だ停滞中。今回のGDP成長も、コロナ前の成長水準には届いていないという*1,*2。それでも、中国のリテールの未来は明るく、市場も強気姿勢を見せている。

中国の調査会社、Equal Oceanは、この7月に「2020年、IPOが最も期待される中国ニューリテール企業 TOP10」を発表した*2。
同サイトの発表によれば、中国の株式市場はコロナ禍以降急速に回復し、IPO取引は昨年と同等レベルで進められているという。

下記に同記事が発表するトップ10を列記していく。

1.Yuanfudao(猿輔導)

2012年に設立。中国のK12オンライン教育に焦点を当てたユニコーン。コロナ禍で急速にシェアを伸ばし、中国のトップedTech企業の1つと位置づけられる。累積サービスユーザーは4億人。Xiaoyuan Souti、Xiaoyuan Kousuan、Yuantiku、Banma AIなど、幅広い学習シーンをカバーする製品を所有している。現在の評価額は120億人民元(約1800億円)。

2.Zuoyebang(作業帮)

2014年、Baidu(百度)内のプロジェクトとして始まり、2015年に独立したedTechユニコーン。当初は写真検索などのツールベース提供から始まり、その後オンラインライブ教室の市場に参入。 Zuoyebang、Zuoyebang Zhiboke、Zuoyebang Kousuanなどのさまざまな教育製品を提供中。累積サービスユーザーは8億人。現在、中国で最大のK12オンライン教育プラットフォーム。評価額は110億人民元(約1650億円)。

3.Xingsheng(兴盛优选)

2014年設立の、コミュニティ型ECプラットフォームで、グループ購買に特化。12の省で展開されており、数千万のアクティブユーザーがいる。
評価額は90億人民元(約1350億円)。2020年IPO登録済みで、実現すればグループ購買型ECとしては国内初のケースになる。

4.Miss Fresh(毎日優鮮)

2015年に設立された無店舗型生鮮小売のユニコーン。既存スーパーとの提携ではなく、自社で生鮮を仕入れ、自社流通センターから直接配送するスタイル。Tencentが出資母体。2020年初頭に月間アクティブユーザー数が270万人を超え、市場で1位となる。直近では、中国最大の投資銀行CICC(中金公司)からの出資を受けている。評価額は90億元(約1350億円)。

5.Kidswant(孩子王)

2009年創業。育児製品に特化したECとしてスタートし、現在は200を超える実店舗を持つO2O企業。0歳から14歳の子供たちと妊婦がターゲットで、彼らの需要を満たす包括的なビジネスモデルを提供。深セン取引所で上場が承認されている。評価額は80億元(約1200億円)。

6.Miniso

2013年に、創業者のGuofu Yeと日本人デザイナーの三宅順也によって設立。当初はファストファッションの小売店として位置付けられ、商品価格を10人民元(約1500円)均一にすることで有名。MUJIやユニクロ、ダイソーのコピーメーカーと揶揄されつつも、出店は国内2000店舗を超え、ECも展開中。2018年からIPO準備室を設置し、近々のIPOが期待されている。評価額は70億元(約1050億円)。

7.Perfect Diary(完美日記)

2017年に設立された中国の化粧品ブランド。最近いくつかの投資銀行とIPOについて話し合っており、今年の終わりか2021年前半に上場する予定。 Zhenge Fund、Boyu Capital、Tiger Global Management、Hillhouse Capitalなどから出資を受けている。

8.Naixue Tea(奈雪の茶)

2015年に設立された有名な国産茶のブランド。すべての直営店舗で運営しフランチャイズは許可されていない。手作りの柔らかいフランスパンと冷たいバブルティー(タピオカ入りアイスティー)が主力商品。何故か日本ぽいブランディング展開をしている。

9.Jiang Xiaobai(江小白)

若者の市場に焦点を当てた中国のアルコールブランドで、ライトアロマの白酒(Bajiu)の江小白(Jiang Xiao Bai)が主力商品。本来「オヤジの酒」だった白酒を若い世代向けにアレンジし、新しいトレンドを確立したTao Shiyuanによって2012年に設立された。JiangXiaobaiの投資家には、Hillhouse Capitalやセコイアキャピタル、IDGキャピタル、などの錚々たるメンバーが並ぶ。ロイター通信は、江小白が2020年に5億ドルから10億ドルを調達するIPOを計画していると報じたが、同社はこのニュースを否定している。

10.Genki Forest(元気森林)

2016年に設立されたサイダーメーカー。この4年間で40億元の企業評価を得て、4回の資金調達を完了している。もともとは砂糖入りの炭酸水(サイダー)が主力だったが、無糖茶、ミルクティー、フルーツティーにもカテゴリを拡張している。

この10社、業界がバラバラであるが、唯一統一されている傾向はDX(デジタルトランスフォーメーション)の実行である。
猿輔導などのオンライン教育や毎日優鮮などのオンラインスーパーはもちろんのこと、オンラインとオフラインの販路マージを目指すKidswantやMinisoなどのアパレル、スマホでオーダーできる飲食の奈雪の茶、プロモーションを完全にデジタルシフトした江小白など、伝統的な業界をデジタルで転換させている企業が全てである。ただ、レポート元であるEqual Oceanの分析にある「日本ぽいブランディングで安く提供するなど、成長持続性に欠けている」などは、的を得た指摘かもしれない。また、同社は、伝統的な業界に変革を起こす場合、巨大なサプライチェーンの改造コストがのしかかる点も指摘している。実際、2018年に大量の有力スタートアップが破産しているのはこのためであるという。

参考画像:Equal Ocean(2020)

参考画像:Equal Ocean(2020)

 

*1 BBC(2020), 中国経済、第2四半期は3.2%拡大 景気後退を回避, retrieved from
https://www.bbc.com/japanese/53427115

*2 日本経済新聞(2020), 中国、プラス成長に転換 4~6月GDP3.2%増, retrieved from
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61572680W0A710C2MM0000/

*3 Equal Ocean (2020), Ten of the Most Anticipated Upcoming New Retail IPOs in China 2020
https://equalocean.com/analysis/2020071514247

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